<NEDO 平成14〜16年度>
地中高温環境利用CO2固定化技術に関する先導研究
目的
CO2と岩石の反応速度は高温ほど速く、炭酸塩鉱物は沈殿しやすくなることが知られて
いる。よって、地中高温地域にCO2を地中に圧入した場合、岩石中のCa やMg との反応に
より炭酸塩が生成し、CO2の固定化が促進される。それとともに、岩石亀裂中で炭酸塩が沈殿す
る場合には、セルフシーリング効果により、その下部にCO2を安定的に貯留するシステム
を形成することが期待できる。本研究の目的は、このような地中高温地域にCO2を貯留し
て固定する技術を開発するための室内実験、現場評価実験を行うと共に、可能貯留量評価を行い、技術の可能性及び実用化についての見通しを得ることである。
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CO2固定概念図
研究結果
(1) CO2固定システムの実用性評価
地中高温環境を利用したCO2の貯留技術の実用性を評価するため、貯留可能量評価を行った。
CO2の貯留可能量は、90℃以上の熱流体が存在する地中高温から活火山地域、国立公園
/国定公園地域を除外するとともに、大規模排出施設から20km 以内の地域に限定して評
価を行った。その結果、実用性の高い地域は北陸や九州地域に存在し、貯留可能量の総量
は約11.8 億トンと推定された。
(2) CO2−岩石反応の室内実験
長石(ラブラドライト)を用いてCO2 との反応実験を行った。その結果、長石からの
CaとSiの溶出を確認したが、浸出液からCO2の脱ガス後に生じた沈殿はCa:Siが3:1
のカルシウムケイ酸塩であり、炭酸塩は確認されなかった。また、電力中央研究所雄勝高
温岩体発電実験場(以下、雄勝実験場)の岩石(花崗閃緑岩)を用いて、流通式実験を行
った。地下1000mを模擬するため、圧力は95atm 及び112atm、温度は200℃とした。
その結果、硬石膏とともに雲母や緑泥石の溶解が推定された。反応後の岩石表面からは、炭酸塩鉱物は確認できなかった。
(3) 雄勝現場実験
雄勝実験場の坑井にCO2溶解水(4.3wt%)を注入して岩石(花崗岩閃緑岩)
と金属試料(炭素鋼とステンレス鋼)を浸漬させ、CO2との反応実験を行った。
温度は208℃、浸漬時間は約16.5時間であった。その結果、岩石については硬
石膏の溶解が観察され、長石の溶解速度はそれより遅いことが確認された。
また、金属については、炭素鋼では腐食が確認されたが、ステンレス鋼につ
いては有意な変化は観察されなかった。
(4) 地熱条件下でのCO2−岩石反応のシミュレーション予測
室内での流通式実験について、速度論によるシミュレーション解析を行った。その結果、
CO2との反応により、長石(灰長石)が溶解し、下流側で方解石やカオリナイトが生成す
るという可能性が得られた。また、CO2の注入地点付近では鉱物の溶解により間隙率は一時的に上昇するが、長期
的には炭酸塩や粘土鉱物等の生成によって間隙率は低下し、シール性能が増進する可能性が示唆された。
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