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ALPS国際シンポジウム2014―持続可能な温暖化対策の実現に向けて―

ALPS国際シンポジウム2014―持続可能な温暖化対策の実現に向けて―

開催結果

 ALPS国際シンポジウム2014を下記のように開催いたしました。官公庁、大学、研究機関、企業、その他団体等から240名の方に参加いただきました。

 気候変動対応の国際交渉が行き詰まっているが、気候変動に関する政府間パネルIPCCは最新の報告書でも地球温暖化は疑う余地がなく、人間活動が主な要因であった可能性が極めて高いとしており、気候変動への対応として新たに協力型の国際枠組みを構築し、継続的に対応していくことが必要であると指摘がありました。産業革命以前比2℃以内に抑制する目標の実現困難性、それにかわる現実的な目標の必要性についても指摘がなされました。またリスクマネージメントとして気候変動問題を捉えた場合、気候変動影響や緩和費用の不確実性の扱い、またその不確実性下での意志決定が課題であり、戦略が必要であることなど提起がありました。深い知見と経験を有する専門家によって、このように大変有意義な講演そして議論が展開されました。

開催概要

日 時
2014年2月4日(火)10:00~17:35
開催場所
東京国際フォーラム
主 催
公益財団法人地球環境産業技術研究機構
共 催
経済産業省

プログラム

 国内では東日本大震災後、最大の課題となっている原子力を含めたエネルギー政策について議論が進展中です。一方、気候変動政府間パネル(IPCC)の第1作業部会は、2013年9月に第5次評価報告書を承認し、その中で「人間活動が20世紀半ば以降に観測された温暖化の主な要因であった可能性が極めて高い」と従来の報告書よりも更に強い確信度を持って気候変動に関する警鐘を鳴らしました。地球温暖化問題は、強い決意を持って着実に取り組んでいかなければならない課題です。国連気候変動枠組条約においては、京都議定書に代わる効果的な新たな枠組みの策定に向けた議論が進められています。しかし、実効ある温暖化対策の実現は大変難しい課題です。世界が地球温暖化問題に的確に対処していけるようにするためには、地球温暖化問題そのものだけではなく、世界の経済社会状況と将来の見通しなどを含めて広く深く理解した上で、地球温暖化対策を長期的かつ広範な視野を持って立案・実行していくことが大切です。

 RITEでは、経済産業省の委託事業として「地球温暖化対策技術の分析・評価に関する国際連携事業」(通称ALPS: ALternative Pathways toward Sustainable development and climate stabilization)を実施しています。この研究事業では、グリーン成長につながるようにするには、温室効果ガス排出削減を中心とする温暖化緩和、温暖化の影響への適応策をどのように進めるべきなのか、また、どのような政策が有効なのかに焦点を当てた研究を行っています。そして、地球温暖化問題研究で世界的に著名なオーストリアの国際応用システム分析研究所(IIASA: International Institute for Applied Systems Analysis)をはじめ、世界の研究機関とも協力しながら研究を進めています。

 このたび、本研究事業の成果報告会として平成25年度ALPS国際シンポジウムを開催致しました。また本シンポジウムには、この分野で活躍している国内外の著名な専門家をお招きし、ご講演頂きました。

 各報告者による発表資料が、ダウンロード(PDFファイル)できます。プログラム内の発表標題をクリックして、入手下さい。

10:00 開会挨拶
山地 憲治, RITE研究所長
10:05 来賓挨拶
三田 紀之, 経済産業省 大臣官房審議官(環境問題担当)
10:10 "中期・長期の温暖化抑制目標をめぐって"(pdfファイル846KB)
茅 陽一, RITE理事長

〔発表主旨: 温暖化抑制パスについて、COPでは2℃目標が繰り返し取り上げられているが、対策にかかる限界費用は2050年には480$/CO2、ガソリン税に換算すると100円/lを超える。これに対し2℃目標を少し緩め、その分実現性を高めることができないか、具体的には2.5℃目標を提案している。累積のCO2排出量と温度上昇はほぼ比例の関係にあることがわかっており、いずれにせよ温度上昇を止めるために抜本的な排出削減が必要で、電力、運輸部門、産業としては鉄鋼やセメントなどが鍵となる。〕

10:45 "Strategies for achieving sustainable climate goals"(pdfファイル3,421KB)
Nebojsa Nakicenovic, IIASA副所長
〔発表主旨:エネルギーサービスは人間の福利厚生に資する。技術発展によりそのコストが下がり、同時に所得が上がったことが飛躍的な普及につながった。炭素削減技術もコストを下げることが重要である。将来は予測不可能であるがエネルギー領域ではエネルギー供給だけでなくエンドユースに学習機会、技術が改善していく機会があると考えられる。技術を組み合わせてシステムとして考えることも大切で、エネルギー対策は安全保障、大気保全、気候変動の面でシナジーがあり、気候変動問題を考える時はこのような視点が必要である。なるべく多くの選択肢を用意してポートフォリオを組むべきである。〕
11:30 "An economic perspective on climate change policy"(pdfファイル216KB)
Robert N. Stavins, ハーバード大学 教授
〔発表主旨:国、地方等どのような行政区域もその行動のコストを担う必要があるが気候変動問題の場合、便益は地球全体に分散される。その便益はコストを上回るがただ乗りの問題が出てくるため国際協力が必須となる。気候変動交渉は継続的プロセスであり、コスト効率的な行動経路を辿るには目標を明確にすること、大きな技術変化が必要であること、行政的には恒久的国際機関の創出が必要であると考える。市場ベースを基本とする、それだけでは十分ではなく他の政策で補完する、発展途上国の参加が必須、事実上の国際協力は既に存在しておりそれら主体者間が連携することがキーポイントである。〕
12:15 休憩
13:25 "地球温暖化リスクのトレードオフと社会のリスク判断"(pdfファイル2,234KB)
江守正多 (独)国立環境研究所 地球環境研究センター 気候変動リスク評価研究室 室長
〔発表主旨:気候モデルで20~21世紀の地表気温変化をシミュレートし温暖化の様子を表現すると、海より陸の方が上がりやすい。IPCC AR5での気温上昇の評価は、社会の発展の仕方と対策の大きさに依存するが科学的な予測にも幅があるというまとめ方である。気温上昇と影響の関係、適応能力を考え、どの影響が受け入れられるのか決めるのは社会の判断となる。気温上昇抑制のため、科学的合理性のみではなく、リスク管理の視点で不確実性下の意志決定として問題を扱うことが必要である。〕
14:10 "Rethinking Climate Negotiations"(pdfファイル3,277KB)
Scott Barrett, コロンビア大学 教授
〔発表主旨:国際気候変動交渉に関してゲーム理論を用いた実験を行っている。温暖化対策はやらなければならないのになぜ少ししか対策できていないのか、現在の国際枠組みを再考する。ゲームの成功は、利他的な行動及び強制かどうかに依存する。京都議定書は強制のメカニズムが無く、利他的な行動も信頼できない。それに対し、モントリオール議定書(CFCの消費・生産を制限し、締約国と非締約国との貿易を禁止)と船舶による汚染防止のための国際条約(MARPOL)(技術基準を満たす船舶のみを入港可能とし、締約国と非締約国との貿易を禁止)は成功例で、協調ゲームであり、囚人のジレンマにはならない。現在、気候変動交渉はCOP21(パリ)に向かって進んでいるが、ゲームを変え協調ゲームの仕組みにすべきである。〕
14:55 "Progress in energy and climate policies around the world—What does it mean for the 2015 international climate agreement?"(pdfファイル1,797KB)
Niklas Höhne, Ecofys エネルギー・気候政策 ディレクター
〔発表主旨:2020年目標のカンクンプレッジは、2℃目標とのギャップが大きい状況にある。ダーバンプラットフォームはすべての国が参加する新たな枠組みを2015年のCOP21までに合意を目指すものである。そこでは、①2℃を目指した厳しい目標を可能にすること、②国内政策を実施する動機づけとなるもの、③協力イニシアティブを支援するもの、でなければならない。〕
15:40 休憩
16:00 "US near term climate policy—A mixed strategies approach"(pdfファイル1,115KB)
Raymond J. Kopp, 未来資源研究所 気候・電力政策センター 上席研究員・センター長
〔発表主旨:米国の気候変動政策の最新動向について紹介がなされた。米国エネルギー情報局の排出量予測は毎年下方修正されてきている。ただし、ベースラインでは2040年にかけ経済成長とともに緩やかに排出増の見込みにある。しかし、再エネのRPS規制も多くの州で導入されており、シェールガスの影響もあり、発電部門で対策が進んできており、コペンハーゲン合意達成の見込みがある。EPAは様々な規制強化を予定している。〕
16:45 "不確実性を踏まえた気候変動対応の総合戦略"(pdfファイル2,326KB)
秋元 圭吾, RITEシステム研究グループ グループリーダー
〔発表主旨:気候変動問題には多くの不確実性が存在している。不確実性下での意思決定が求められている。気候変動影響被害の不確実性が強調され、リスク回避的に安全サイドで対策を考えるべきとの主張も多いが、実際には緩和費用の不確実性も大きく、両者の不確実性を考慮した戦略立案が望まれる。緩和策、適応策、ジオエンジニアリングそれぞれの対策の特徴は異なっており、総合的なリスク低減を考えた総合的な戦略立案が必要である。〕
17:30 閉会挨拶
本庄 孝志, RITE専務理事

お問合わせ

事務局:
〒619-0292 京都府木津川市木津川台9-2
(公財)地球環境産業技術研究機構(RITE) システム研究グループ
TEL: 0774-75-2304  FAX: 0774-75-2317

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