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ALPS国際シンポジウム2016-COP21の評価と長期的な温室効果ガス排出削減に向けて-

ALPS国際シンポジウム2016-COP21の評価と長期的な温室効果ガス排出削減に向けて-

開催結果

 ALPS国際シンポジウム2016を下記のように開催いたしました。官公庁、大学、研究機関、企業、その他団体等から320名の方に参加いただきました。
 気候変動枠組条約では、第21回締約国会議(COP 21)が開催され、2020年以降の気候変動対応の国際枠組み(パリ合意)が決まり、世界のほぼすべての国が排出削減に取り組む新たな枠組みができました。
 多くの講演では、パリ協定を評価するとされた一方、米国の今後の政策動向によって左右されるとの指摘もありました。また、2030年に向けて国際的なレビューの重要性が指摘されるとともに、2030年以降の技術進展と普及の重要性も強調されました。しかし、パリ協定で言及された1.5℃目標については、実現は極めて困難な目標であることも指摘がありました。深い知見と経験を有する専門家によって、このように大変有意義な講演そして議論が展開されました。

開催概要

日 時
2016年2月10日(水) 10:00~16:50
開催場所
大手町サンケイプラザ(東京)
主 催
公益財団法人地球環境産業技術研究機構
共 催
経済産業省

プログラム

 2015年12月にパリで気候変動枠組条約の第21回締約国会議(COP21)が開催され、2020年以降の気候変動対応の国際枠組み(パリ合意)が決まりました。世界の大多数の国が自国の温室効果ガス排出削減目標等を約束草案(Intended Nationally Determined Contributions (INDCs))として提出し、世界のほぼすべての国が排出削減に取り組む新たな枠組みができました。しかし、実効性を伴ってそれを実現していくことが必要ですが、まだ端緒についたばかりと言えます。また、多くの国が2030年までの目標を掲げましたが、気候変動抑制にはむしろそれ以降の排出削減が重要であり、より長期的な対策にも注力する必要があります。

 RITEでは、経済産業省の委託事業として「地球温暖化対策技術の分析・評価に関する国際連携事業」(通称ALPS: ALternative Pathways toward Sustainable development and climate stabilization)を実施しています。この研究事業では、グリーン成長につながるようにするには、温室効果ガス排出削減を中心とする温暖化緩和、温暖化の影響への適応策をどのように進めるべきなのか、また、どのような政策が有効なのかに焦点を当てた研究を行っています。そして、地球温暖化問題研究で世界的に著名なオーストリアの国際応用システム分析研究所(IIASA: International Institute for Applied Systems Analysis)、米国の未来資源研究所(RFF: Resource for the Future)をはじめ、世界の研究機関とも協力しながら研究を進めています。

 このたび、COP21の節目を終えたこの時期において、COP21の成果とその課題を踏まえつつ、今後の長期的な気候変動対応策の方向性を探るため、また本研究事業の成果報告会を兼ねて平成27年度ALPS国際シンポジウムを開催しました。また本シンポジウムには、この分野で活躍している国内外の著名な専門家をお招きし、ご講演頂きました。

 各報告者による発表資料が、ダウンロード(PDFファイル)できます。プログラム内の発表標題をクリックして、入手下さい。

10:00 開会挨拶
山地憲治, RITE研究所長
10:05 来賓挨拶
三又 裕生, 経済産業省 大臣官房審議官(環境問題担当)
10:10

"ゼロエミッション社会への道"(pdfファイル1,038KB)

"The way to a zero emission society"(英語版)
茅 陽一, RITE理事長

〔発表主旨: 気温の安定化が重要である。そのためにはいずれのレベルに安定化するにしても、究極的にはCO2のネットゼロ排出が必要である。各部門でのゼロエミッションの可能性について、更なる精査と、具体的なロードマップ策定の必要で、ゼロエミッションのためには、発電ではCCSの利用は不可欠である。また電力需要の増大は不可欠である。中期的には、再エネ+大規模蓄電、大規模太陽熱発電、長期では、宇宙太陽光発電、核融合などが重要である。〕

10:45

"COP21その先へ:地球規模の脱炭素化の見通し"(pdfファイル2,546KB)

Nebojsa Nakicenovic, IIASA副所長

〔発表主旨:2℃目標のためには2100年にネットゼロ排出前後が、また1.5℃目標のためには2100年にネガティブ排出削減不可欠である。エネルギーアクセス、エネルギー安全保障、大気汚染など、気候変動以外にもエネルギーをとりまく課題は多い。SDGsでも取り上げられている。それらのコベネフィットが存在し、気候変動対策単独で考えるよりも費用が安価である。過去、技術のコストは大幅に低下しそれに伴って普及してきた。安価な技術を実現することは重要である。大幅な排出削減のために大きな投資を行っていくこと、また省エネへの大きな投資も重要である。〕

11:30

"COP21の成果と今後の展望について"(pdfファイル567KB)
上野貴弘, 一般財団法人電力中央研究所 主任研究員

〔発表主旨:パリ合意(パリ協定+決定)について解説。ボトムアップの自主的目標提出(+レビュー)とトップダウンの長期目標(2℃、1.5℃、21世紀末実質ゼロ排出)をグローバル・ストックテイクで調整を図っていくこととなる。緩和、資金、透明性など多くの課題について、共通化・差異化や拘束力の有無をつけて、全会一致の合意を作り上げた。NDC提出時期を5年毎に世界全体で揃え、またグローバル・ストックテイクを実施し、注目を集め排出削減意欲を高める仕組みとした点は注目される。米国政権次第(2017年、2021年大統領交代時期)によって、協定離脱のリスクもある。また離脱しないまでも緩い目標に修正される可能性も高い。〕

12:15 休憩
13:25

"パリ協定以降の米国の気候政策:経済と政策"(pdfファイル572KB)

Raymond Kopp, 未来資源研究所(RFF) 上席研究員・共同ディレクター

〔発表主旨:米国の2025年排出目標は2005年比26~28%減だが、2014年排出は05年比で9.4%減。主にシェールガスで削減。2025年に向けては経済成長により4.7%増える。Clean Action Planにより10.1%減、他の気候変動政策によって4.7~8.2%減、残りは追加的な対策が必要と見られる。なお、民主党、共和党の色分けがはっきりしている州は多く、州知事、議会ともに排出削減に熱心というのは、東海岸、西海岸の一部州に限定されている。州レベルの追加対策は重要だが、排出の大きい州ほど熱心ではなく削減は容易ではない。〕

14:10

"長期的野心と短期的行動から見たパリ協定の含意"(pdfファイル3,792KB)
Elmar Kriegler, ポツダム気候影響研究所(PIK) 上席研究員

〔発表主旨:2℃目標達成の最適経路と約束草案は大きなギャップあり。このままでは、2℃目標達成のためには、2030年以降、大きな排出削減率を達成する必要があり、コストが増大する。最適経路は無理としても、2030年の排出削減を更に進めるBridgeシナリオを実現することを提案する。低炭素電源の大幅な拡大が必要。発電設備は長期にロックインするため、石炭火力のレベルは、約束草案では不十分で、もっと減らす必要あり(ガスについても)。排出削減と大気汚染やエネルギー安全保障とのコベネフィットは大きい(ただし、日本やEUは大気汚染とのコベネフィットは小さい。日本はエネルギー安全保障とのコベネフィットは大きい⇒ただし化石燃料輸入比率で測っており、例えば石炭の輸入元の安定性などは考慮されていない)〕

14:55 休憩
15:15

"ポストCOP21及びその後:進捗とコンプライアンスをモニターするための新しいコンセプトおよび政策支援の必要性"(pdfファイル892KB)

Arnulf Grubler, IIASA 技術進化プログラム リーダー

〔発表主旨:一次エネルギー投入量で測ると脱炭素化の速度は遅いように見えるが、最終エネルギー利用段階の"Useful energy"で測ると脱炭素化速度は2倍ほど早い。"Useful energy"で測ると、米国がたどってきたよりも中国の進展は極めて速いこともわかる。日本のエネルギー効率は高い。トップランナー規制など良質な政策を辛抱強くとってきたことにより成功してきた。エネルギー需要側技術の進展が早い理由は、省エネルギーの利得、技術規模が小さいため早い実証等が可能、価格ではなく性能が重視される、ソーシャルネットワークの伝播等による。規模が小さい技術は技術習熟率が高い。それを内生的技術習熟モデルとしてモデル化して評価すると、最適解は大きく異なったものが導出される。また、ソーシャルネットワーク、ピア効果を考慮したエージェントベースモデルの試評価も実施した。〕

16:00

"約束草案の排出削減努力の評価と2030年以降の排出削減への道筋"(pdfファイル2,157KB)
"Evaluations on emission reduction efforts of INDCs and pathways to deep emission reductions beyond 2030"(英語版)
秋元圭吾, RITEシステム研究グループ グループリーダー

〔発表主旨:パリ協定では自主的目標を提出。その実効性を高め、更なる排出削減を促すためには、適切なレビューを行うことが重要。複数の指標を用いて排出削減努力について評価。各国約束草案は限界削減費用等に大きな差異が認められる。また限界削減費用の差により、炭素リーケージが起こり、CO2排出削減のオフセットも推計される。2℃目標と約束草案には大きなギャップがあるが、ただし、気候感度によってはまだ整合的と評価もできる。1.5℃目標はほとんど不可能である。2℃目標に対しては、複数の科学者等から多くの批判がなされている。現実を踏まえたリスク対応戦略としては、例えば、600 ppm CO2eq以内の排出に収まるように短中期の削減を進めておき、一方で超長期にゼロ排出を目指し革新技術開発に注力。また、適応も進める。更には気候変動影響が大きかったときのためにSRMを研究だけは進めておくというのが一つの戦略と考えられる。〕

16:45 閉会挨拶
本庄孝志, RITE専務理事

 

お問合わせ

〒619-0292 京都府木津川市木津川台9-2
(公財)地球環境産業技術研究機構(RITE) システム研究グループ
TEL: 0774-75-2304  FAX: 0774-75-2317

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