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ALPS国際シンポジウム2019-経済成長と長期大幅排出削減の両立に向けた挑戦-

ALPS国際シンポジウム2019-経済成長と長期大幅排出削減の両立に向けた挑戦-

開催結果

 平成30年度ALPS国際シンポジウムを下記のように開催いたしました。官公庁、大学、研究機関、企業、その他団体等から278名の方に参加いただきました。
 RITEでは、経済産業省の委託事業として「地球温暖化対策技術の分析・評価に関する国際連携事業」(通称ALPS: ALternative Pathways toward Sustainable development and climate stabilization)を実施しています。この研究事業では、グリーン成長に資する国際枠組み、国際戦略立案に資する研究を進めており、その中で、パリ協定の実効性を高めるためのレビュー方法の検討や、温室効果ガス排出削減を中心とする温暖化緩和策および適応策の評価、またこれらをどう組み合わせて長期の気候変動リスクに対応するか、について検討を行ってきています。更には、昨今のIoTの進展や、それに伴うシェアリングエコノミーなどは、エネルギー需要サイドの革新につながり、効用(サービス需要)を下げずにエネルギー需要量を低減できる大きな社会的な変化の可能性も含んでおり、そのような将来的な低需要シナリオの検討や適切なファイナンスも含めたグリーン成長の検討などにも取り組んできています。
 2015年12月の気候変動枠組条約の第21回締約国会議(COP21)においてパリ協定が合意され、2016年11月に発効しました。世界の大多数の国が2020年以降の自国の温室効果ガス排出削減目標等をNationally Determined Contributions (NDCs)として提出し、世界のほぼすべての国が排出削減に取り組む新たな国際枠組みができました。そして2018年12月のCOP24では、パリ協定実施のための詳細ルールの基本的な合意をみました。また、長期的な温室効果ガス低排出型の発展を目指した「長期低排出発展戦略」の国連への提出期限(2020年)が迫ってきていることもあり、2050年以降の長期にわたる温暖化対策やグリーン成長に関する議論が国内外で活発になってきています。
 このたび、様々な気候変動のリスクを認識しつつ、経済成長と長期大幅排出削減の両立に向けた方向性を探るため、また本研究事業の成果報告会を兼ねて平成30年度ALPS国際シンポジウムを開催しました。本シンポジウムでは、国際応用システム分析研究所(IIASA)、米電力研究所(EPRI)、国際エネルギー機関(IEA)、国際経済開発協力機構(OECD)からの海外招聘者計5名、慶應義塾大学産業研究所、キヤノングローバル戦略研究所からの国内招聘専門家2名により、技術的、社会的なイノベーションによる将来的な低需要シナリオの可能性を中心に、ビジネスベースでの排出削減の国際的な動向やエネルギー生産性に関する評価など様々な観点から講演を頂き、講演者と参加者との間で活発な質疑が行われました。経済成長と長期大幅排出削減の両立に関して、幅広い方々が最新の研究成果をもとに深く考える有意義な機会になったと考えます。

開催概要

日 時
2019年2月19日(火) 10:00~17:40
開催場所
虎ノ門ヒルズフォーラム(東京)
主 催
公益財団法人地球環境産業技術研究機構
共 催
経済産業省

プログラム

 各講演者による発表資料が、ダウンロード(PDFファイル)できます。プログラム内の発表標題をクリックして、入手下さい。

10:00 開会挨拶
茅 陽一, RITE理事長
10:05 来賓挨拶
信谷 和重, 経済産業省 大臣官房審議官(環境問題担当)
10:10

"国内外の政策動向とCO2大幅削減への長期戦略シナリオ"(pdfファイル2,351KB)
"Policy trends of Japan and the world, and scenarios of long-range strategy for deep CO2 emissions reduction"<英語版>(pdfファイル2,373KB)

山地 憲治, RITE理事・研究所長

〔発表主旨:気候変動対策の国内外の動向について説明。エネルギー基本計画策定に向けたこれまでの動きとして、エネルギー情勢懇談会での長期の議論の状況を紹介。さらに長期の大幅排出削減に向けた対応を考える前提として、「地球温暖化対策の基本構造」を説明し、Society 5.0(超スマート社会)により社会構造・ライフスタイルを変えることの重要性を強調。〕

10:40

"ネットゼロ排出に向けた破壊的技術と持続可能なライフスタイル"(pdfファイル4,170KB)

Nebojsa Nakicenovic, 国際応用システム分析研究所(IIASA)副所長

〔発表主旨:ネットゼロ排出に向けた変革にはエネルギー戦略以上のビジョンが必要になる。デジタル革命、スマートシティ、食料・水、人口、消費と生産、脱炭素化とエネルギーが6つの主要な変革と考えられている。様々な新しい技術変革が提案、開発されているが、これらを活用してエネルギー需要が低下するシナリオを実現できれば、気温目標を達成しやすくなる。〕

11:20

"企業における気候政策リスクの評価—企業、投資家などのための科学的基盤—"(pdfファイル2,919KB)

Steven Rose, 米電力研究所(EPRI) エネルギー・環境分析研究グループ 上級リサーチエコノミスト・技術エグゼクティブ

〔発表主旨:2℃目標と企業の活動には大きなギャップがある。両者の間には、グローバルなGHG排出、国のGHG排出、地方自治レベルのGHG排出があり、それぞれには不確実性がある。企業によって排出削減水準には差異があって当然。気候関係のリスクは、企業にとって多くあるリスクのひとつに過ぎない。不確実性に対処するために柔軟性と様々なオプションを包摂したパッケージを有しておくべき。〕

12:00 休憩
13:15

"世界エネルギー展望2018からの電力の遷移に関する洞察"(pdfファイル1,088KB)

Yasmine Arsalane, 国際エネルギー機関(IEA)世界エネルギー展望 シニアエネルギーアナリスト

〔発表主旨:World Energy Outlook (WEO) 2018では電力に焦点あてており、その内容について紹介。電力比率の上昇はCO2削減の機会を増やす。環境目標を達成するため、発電部門の対策に加え、発電部門以外も含む包括的な対策・デザインが必要である。〕

13:55

" エネルギー生産性改善の黄金期は再び訪れるか?"(pdfファイル1,044KB)

"Are we entering a new golden age of energy productivity improvement?"<英語版>(pdfファイル846KB)
野村 浩二、慶應義塾大学産業研究所 教授

〔発表主旨:エネルギーの品質、産業構造の変化を統御した「真のエネルギー生産性」は、1990年以降0.1%であり、かなり小さい。リーマンショック後のエネルギー生産性の向上の内、真の向上はわずか1/4であり、黄金期を告げるものではない。20世紀の経験からは2050年の楽観視を支持できない。〕

14:35

"汎用目的技術と地球温暖化"(pdfファイル2,361KB)

"General purpose technology and global warming"<英語版>(pdfファイル1,097KB)
杉山 大志、キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹

〔発表主旨:テクノロジーはどうやって育ち、それが温暖化対策に活かされるとはどういうことか。例えば、風力発電技術は電気工学など様々な技術の構造体である。ブレードで使用される強化プラスチックは元はスポーツ、釣り、ジェット機等で使用されていた素材である。温暖化とは関係ない科学技術(汎用目的技術)の進歩の恩恵を受けて、温暖化対策技術は生まれる。〕

15:15 休憩
15:35

"運輸部門の大幅排出削減"(pdfファイル3,945KB)

Jari Kauppila, 国際経済開発協力機構(OECD)国際交通フォーラム 定量政策分析・展望部門長

〔発表主旨:運輸部門の大幅排出削減において、イノベーションは重要であり、技術と政策の両方で必要である。都市に着目すると、排出量減少分の60%が技術由来であり、残りの40%は行動変化を引き起こす政策による。今日の政策は車体、燃料、駐車に対する価格政策だが野心的目標には不足する。シェアモビリティなどの普及が必要である。都市別にシェアモビリティによる排出削減効果も推計した。〕

16:15

"持続可能な開発と大幅脱炭素化のための代替的戦略-エンドユース、効率、粒度、デジタル化への新たな注目-"(pdfファイル2,019KB)

Arnulf Grübler, 国際応用システム分析研究所(IIASA) 新技術移行プログラムディレクター

〔発表主旨:1.5℃目標の達成のためのエンドユースおよび需要側からの代替戦略を示す。統合評価モデルでは、技術の粒度が考慮されていなく問題である。低エネルギー需要(LED)シナリオのドライバーでは、エンドユーザーの役割、QOL、情報のイノベーションなどを長期のトレンドとして取り、規範的なシナリオを作っている。LEDはSDGsにも多くのシナジー効果をもたらす。〕

16:55

"製品、サービス、社会システムのイノベーションと温暖化対策への影響"(pdfファイル3,523KB)
"Innovations of products, services and social systems, and their impacts on climate change mitigation measures"<英語版>(pdfファイル3,066KB)
秋元圭吾, RITEシステム研究グループ グループリーダー

〔発表主旨:経済と環境のデカップリングについて、多くの国がデカップリングを実現しているが、産業構造の移転によるもので、世界全体ではデカップリングが見られない。また、低エネルギー需要シナリオではエンドユースの部分に省エネの余地があるが、現時点では隠れたコストが多くあり、ITやAIのイノベーションにより経済自律的もしくは安価な費用で低エネルギー需要社会、低CO2排出を実現できる余地がある。〕

17:35 閉会挨拶
本庄孝志, RITE専務理事
(司会)長島美由紀

 

お問合わせ

〒619-0292 京都府木津川市木津川台9-2
(公財)地球環境産業技術研究機構(RITE) システム研究グループ
TEL: 0774-75-2304  FAX: 0774-75-2317

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