エネルギーミックスの分析とGHG排出見通し2015年4月
現在、政府において、エネルギーミックスと約束草案(温室効果ガス排出削減目標)の議論が行われています。今回、政府によるエネルギーミックス検討のマクロフレーム(GDP見通し等)と整合的な条件をおいた上で、RITEが保有しているエネルギー技術評価モデルDNE21+とエネルギー経済モデルDEARSを用いて、本議論に関連した分析を行いました。
分析の具体的なシナリオは、2030年の電源構成について、ベースロード電源(原子力、石炭、水力、地熱)比率が40%、50%、60%等の場合、また、再生可能エネルギー比率が15%、20%、25%、30%の場合、といった複数のエネルギーミックスのシナリオを想定しました。
上記に加え、最終エネルギー需要等における省エネルギーやCO2排出削減対策も評価するために、CO2排出削減強度の異なる2種類のシナリオ(IEA世界エネルギー見通し(WEO)2014の分析で用いられた"新政策シナリオ"と"450シナリオ"の炭素価格水準)を想定しました。これらのシナリオについてモデルを用いた分析を行い、それぞれのシナリオの電源構成、一次エネルギー供給、エネルギーシステムコスト、GDP影響、電気代の見通し等について推計しました。
震災以前60%程度あったベースロード電源は、2013年時点において40%程度にまで下がっています。結果について、2030年において、ベースロード電源比率が40%(再エネ比率は30%と想定)の場合に比べ、ベースロード電源50%(再エネ比率25%)になれば、年1.4兆円もエネルギーシステムコストは低下すると見られます。更に、ベースロード電源60%(再エネ比率20%)になれば、年2.4兆円もエネルギーシステムコストは低下します(CO2排出削減強度をWEO"新政策シナリオ"程度とした場合)。GDPは、2013年の電源構成比率が2030年まで継続したとする現状放置ケースと比べ、ベースロード電源比率が50%のときは年間+2.6兆円、60%になれば+3.5兆円程度引き上がると推計されました。
またGHG排出量見通しについて、ベースロード電源比率が60%程度、かつ原子力比率が20%程度の場合、最終エネルギー需要での省エネ等の対策を強化しても、2030年のGHG排出量は2005年比で10%減程度と見られます。これを15%減程度に近づけるためには、原子力比率は25%程度が必要になると推計されました。
詳細は下記を参照下さい。
エネルギーは産業の基盤であり、エネルギー政策の意思決定は長期にわたって経済、温室効果ガス排出に影響をもたらします。蓋然性が高く、客観的かつ整合的な分析に基づいて、経済影響(コスト負担を含む)および温室効果ガス排出削減等と、エネルギーミックスの相互関係を冷静に把握した上で、意思決定を行うことが大切です。
(平成27年3月31日掲載)
- エネルギーミックスの分析と温室効果ガス排出見通し(PDFファイル1,046KB)
上記の分析では、電源構成の違いによるシナリオについて2030年断面の平均発電コストの推計も行っています。そこで時系列的な推移をより詳細に反映し、平均発電コストの推移を見るべく、補完的な分析を行いました(平成27年4月14日掲載)。
- シナリオによる電力コスト推移に関する補足資料(PDFファイル707KB)
3月31日公表の分析では、日本がIEA WEO2014の新政策シナリオおよび450シナリオで想定されている炭素価格水準までのコストの温室効果ガス排出削減対策をとる場合の日本の排出削減見通しを評価しています。本補足資料は、これら炭素価格水準を含め、想定する異なる炭素価格水準までの対策を他の主要国がとるとした場合、各国の温室効果ガス排出削減がどの程度となるかについて分析を行いました。排出削減努力の国際的な比較について参考情報となると考えられます (平成27年4月14日掲載)。
- 主要国の排出削減見通しに関する補足資料(PDFファイル216KB)