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CCSとは

  • QCCSとは何ですか?

    A

    CCS(シーシーエス)とは、Carbon dioxide Capture and Storageの略であり、二酸化炭素(CO2)の回収(Capture)、貯留(Storage)を意味しています。火力発電所や製鉄所、セメント工場などの排ガスから二酸化炭素(CO2)を分離して集め(回収)、パイプラインや船舶で輸送し、CO2を貯留するのに適した地下深く(約800m~3km)の地層に閉じ込める技術です(※1)。

    産業革命以降、化石燃料の大量消費によって大気中のCO2濃度が増加を続け、地球温暖化が起きています。地球温暖化を抑えるためにはCO2の排出を減らす必要がありますが、CCSはその重要な手段の一つと考えられています。

    CCSは、1990年代から海外で実証試験が開始され、2023年7月末時点で世界中で41件のCCS事業が行われており、351件が開発段階にあります(GCCSI, 2023)(※2)。国内では、経済産業省及び独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が、2023年度より「先進的CCS支援事業」をスタートさせ、その後にCCSの本格的な事業展開を目指します(※3)。

    (解説)

    (※1) CO2を回収し、輸送して、地中に貯留するまでを図1に示します。

    CCSの全体構成のイメージ図

    図1 CCSの全体構成のイメージ図


    (※2)

    • ・世界で最初の本格的なCO2貯留事業であるノルウェーのスライプナープロジェクトでは、天然ガス随伴CO2を分離回収し北海の海底下の地層に貯留(圧入)しており、1996年以来、毎年約100万トンのCO2が圧入されており、既に約2,000万トンのCO2が貯留されています。
    • ・日本では2003年~2005年に新潟県の長岡市の地中に約1万トン、2016~2019年に北海道の苫小牧市の沖合の海底下に約30万トンのCO2を貯留する実証実験が行われました。


    (※3) 先進的CCS事業9件(図2)により、年間貯留量2,000万トンを目指します(経済産業省HP)。

    先進的CCS事業

    図2 先進的CCS事業


    参考文献

  • QなぜCCSが必要なのですか?

    A

    二酸化炭素(CO2)の大気中への排出を減らすためです(※1)。CO2は温室効果ガスの一つで地球温暖化の主要因です(※2)。国際的な研究機関等の分析では、温室効果ガスの排出を実質ゼロ(カーボンニュートラル)にするために、CCSは不可欠な技術の一つとされています(※3)。

    (解説)

    (※1) 地球温暖化を抑えるために、日本政府は2050年カーボンニュートラル宣言を出しました。その実現のためには、省エネルギーや再生可能エネルギー利用など様々な取り組みが必要です。CCSもその取り組みの一つであり、政府のエネルギー基本計画において、CCSはCO2排出ゼロ達成のための重要な技術の一つとして位置づけられています(経済産業省, 2021)。


    (※2) IPCC(アイピーシーシー)の報告書(世界中の専門家が話し合い、研究成果をまとめた報告書)には「向こう数十年の間にCO2及び他の温室効果ガスの排出が大幅に減少しない限り、21世紀中に1.5℃及び2℃の地球温暖化を超える」と書かれています(文部科学省及び気象庁, 2022)。


    (※3) 国際エネルギー機関(IEA:アイイーエー)の分析でも、エネルギー分野の脱炭素の一部をCCUS(*)が担うとされています(IEA, 2023;図1)。IPCCの報告書には、エネルギー分野だけでなく、産業分野でのCCSの重要性にも言及されています(IPCC, 2022)。

    (*) CCUS(シーシーユーエス)はCCSとCCU(シーシーユー)を合わせた言葉です。CCSが回収したCO2を地下深くに貯留する技術を指すのに対し、CCUはCO2を産業や工業製品等に利用する技術を指します。

    発電の脱炭素化に寄与する技術

    図1 発電の脱炭素化に寄与する技術(IEA, 2023 のFigure 1.5を和訳)


    参考文献

  • Q二酸化炭素(CO₂)はどこで発生しているのですか?

    A

    火力発電所・熱供給事業者(エネルギー転換部門)や工場(産業部門)における化石燃料の燃焼、また工場の製造プロセス、さらには廃棄物燃焼でも二酸化炭素(CO2)が発生します。以上の分野で日本全体のCO2排出量の約7割を占めますが、これらがCCSによる脱炭素化の主な対象となります。(※1)

    その他にも、自動車・バス・トラック等の運輸部門、オフィスビル等の業務その他部門、家庭部門でもCO2が発生しますが、これらは主に省エネと電化で脱炭素化が可能となります。

    (解説)

    (※1)どこからどれだけCO2が排出されているのかを図1に示します。

    2022年度日本の部門別二酸化炭素排出量の割合

    図1 2022年度日本の部門別二酸化炭素排出量の割合
    (温室効果ガスインベントリオフィス(2024)に基づき作成)


    参考文献

  • Q温暖化対策には、再生可能エネルギーや水素を活用すればよいのではないですか?

    A

    発電のカーボンニュートラル化推進のために、再生可能エネルギーの普及拡大は極めて重要です。ただし、日射や風況により出力が変動する再生可能エネルギーだけで電力消費量のすべてを賄うことは現在のところ難しいため、再生可能エネルギー、火力発電、原子力発電等を組み合わせ、バランスのとれた電源構成とすることが必要です(※1)。電気は需要量と供給量を一致させないと大規模停電になるため、発電量の調整に優れている火力発電は重要です。火力発電を稼働させ、かつ二酸化炭素(CO2)を排出させないためにCCSを導入することが重要となります。

    また、CO2を発生させない水素を利用した発電も注目を集めています。水素の製造方法としては、再生可能エネルギーにより水を電気分解する方法と天然ガスや石炭を改質する方法があります。前者の方法はCO2が発生しませんが、後者の方法ではCO2を発生させるため、CCSが必要です(※2)。ただし、前者の方法で水素を大量に製造することは難しく、かつコストがまだ高いため、大量の水素を製造するためには後者の手法に頼らざるを得ないのが現状です。

    一方、工場の脱炭素化に、電化、水素利用は有効な手段です。ただし、大規模で高温の燃焼や、化学反応プロセスには、化石燃料の利用がいまだ必要であり、その過程の脱炭素化にはCCSの利用が不可欠です。

    (解説)

    (※1) 火力発電は、電力の供給だけでなく、需給バランスの調整という役割も担っています(図1)。

    電力量の日変動の例(九州管内の夏季と冬季)

    図1 電力量の日変動の例(九州管内の夏季と冬季)

    九州電力送配電需要実績データを取得し作図

    昼間は太陽光発電(赤色)がありますが、夜になると発電できなくなるため、火力発電(灰色)を増やして電力供給の調整が行われています。


    (※2) 水素は製造方法によって、グレー水素、ブルー水素、グリーン水素に分類されます。

    グレー水素、ブルー水素、グリーン水素

    図2 グレー水素、ブルー水素、グリーン水素(資源エネルギー庁HPより)

    化石燃料から作られる水素のうち製造過程でCO2を排出させたものをグレー水素、CCSでCO2の排出を抑制したものをブルー水素といいます。グリーン水素はCO2が発生しない製造方法で作られた水素です。


    参考文献

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