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CCSの仕組み

  • Q二酸化炭素(CO₂)をどのようにして集めるのですか?

    A

    排ガス等に含まれる二酸化炭素(CO2)を吸収材や吸着剤等に取り込んだ(分離)後、吸収材や吸着剤等からCO2を取り出したり(回収)、CO2だけを通す膜を通してCO2を回収したりします。排ガス等の圧力や含まれるCO2の濃度が様々であるため、排ガスの特徴に適した様々な分離・回収の方式が開発されています(※1、※2)。

    (解説)

    (※1) 表1にCO2の分離回収技術をまとめています。

    表1 CO₂分離回収技術の分類と特徴

    分離回収方法 材料・原理等 特徴・課題等
    (液体)
    吸収法
    物理吸収法 メタノール、ポリエチレングリコールジメチルエーテル溶液等に高圧のCO₂を溶解度差で吸収 低温ほど吸収量が大きい、CO₂分圧が大きい天然ガス精製に多くの実績あり(低圧には不適)
    化学吸収法 アルカリ塩、アンモニア、アミン類等との化学反応を利用

    燃焼排ガス等の低圧、低CO₂濃度のガスにも適用可能、大規模化が容易、実用化済み

    液の再生に大量の蒸気が必要

    (固体)
    吸着法
    物理吸着 ゼオライト、活性炭等の多孔質材料の細孔内へのファンデルワールス力による吸着

    前段での脱水のための動力が大、大規模回収が困難

    化学吸着(吸収)

    多孔質担体にアミンまたはアルカリ金属を担持

    化学吸収法と原理は同じ

    除湿プロセスの省略が可能、

    固体のハンドリング、大規模化が課題

    膜分離法 圧力差を駆動力とし、駆動部分がないため設備が簡単、操作が容易(連続処理プロセス) 十分な圧力差が必要、回収CO₂純度が低い
    深冷分離法 ガスを冷却し、液化蒸留、部分凝縮による分離 高濃度のCO₂分離には有効、低濃度排ガスには適さない

    https://www.env.go.jp/earth/ccs/attach/mat03.pdf等各種資料をもとに作成


    (※2)分離・回収技術については弊機構化学研究グループのHPもご参照ください。
    https://www.rite.or.jp/chemical/research/co2/

  • Q二酸化炭素(CO₂)をどのようにして運ぶのですか?

    A

    二酸化炭素(CO2)を圧縮し高密度にして、パイプラインやCO2輸送船で運びます(※1)。また、回収量、貯留量との調整用として一時貯蔵タンクを設ける等の付帯設備も必要となります(※2)。

    万が一輸送中にCO2が漏れたとしても大気中で拡散し薄まるため広範囲に影響が及ぶことはないと考えられていますが(※3)、大量に漏れた場合には漏出点の近傍や窪地では高濃度になることもあり得ます。そのため、海外では適切なパイプライン輸送のためのガイドラインもあります。

    (解説)

    (※1)CO2輸送手段として以下があります。

    • タンクローリー輸送(主に短距離:数十km程度)
    • 鉄道輸送(短~中距離:百km程度)
    • パイプライン輸送(短~長距離:数百kmまで)
    • 船舶輸送(主に長距離:数百km以上)


    輸送するCO2は高圧にし、圧縮しますが、その例を表1にまとめています。


    表1 CO2の状態ごとの特性(温度、圧力、密度、体積、体積比)

    日本機械学会(1983)、日本液炭HP、神鋼エアーテックHPなどを参照して作成

    CO2の状態ごとの特性(温度、圧力、密度、体積、体積比)


    (※2)ノルウェーでは、船舶輸送されたCO2を受け入れるための陸上基地に9,150m3の貯蔵タンク(CO2として約9,000トン)が現在建設中です(Equinor, 2019; Northern Lights, 2023)。


    (※3)パイプラインや輸送船により輸送しているCO2の圧力は、大気圧より高いため、損傷等でパイプラインや配管等に穴が開くと、損傷個所からCO2は勢いよく噴出しますが(図1)、すぐに拡散して大気と混ざり薄まります。

    パイプから噴出したCO2のイメージ図

    図1 パイプから噴出したCO2のイメージ図(Guo et al., 2017を参照し作成)

    パイプから出た直後は圧力の低下により膨張し、低温化します。ドライアイスができることもあります。パイプからは白い煙(白色雲)が噴き出すように見えますが、これは低温のCO2により空気中の水蒸気が氷結したものです。


    参考文献

  • Q二酸化炭素(CO₂)をどこに、どのようにして地中に閉じ込める(貯留する)のですか?

    A

    石油や天然ガスは何百万年以上にもわたり地下深くの地層に貯留されています。CCSで二酸化炭素(CO2)を貯留するのは石油や天然ガスが貯留されていたのと似た構造を持った地層です。そのような地層であれば、石油や天然ガスが何百万年以上も地層の中にとどまっていたのと同じようにCO2も安定的に貯留できると考えられるからです。


    以下のような特徴を持った地層がCO2を貯留する地層(貯留層)として選ばれます(※1)。

    ① 約800mより深い位置にある(※2)

    ② CO2を押し込みやすい、砂粒のように比較的大きな粒子からなる隙間が多い地層である(※3)

    ③ CO2が漏れないように泥岩(※3)のような緻密な地層(遮へい層)が真上にある(※4)


    このような特徴を持つ地層に、石油や天然ガスを採掘するときと同じように井戸を掘り、その中にCO2の通り道になるパイプを設置し、圧力をかけて地層の岩石の中にある目に見えないくらい小さな隙間にCO2を押し込みます(※5)。

    (解説)

    (※1) CO2が貯留層に閉じ込められることを示すイメージ図と実験結果を図1に示します。

    CT_image.png

    図1 CO2貯留のイメージ(a)と岩石試料を用いた実験(b)

    a) 上部に遮へい層がある貯留層(砂岩など)にCO2を注入します。CO2は遮へい層(泥岩など)により上部への移動を妨げられ、砂岩の粒子の隙間に溜まったり、地層内に含まれる水に溶けたりして、貯留層に閉じ込められます。

    b) 採取した岩石試料(上部が遮へい層、下部が貯留層に相当)に実験室でCO2を注入し、X線CTで観察すると、隙間の大きい下部にしかCO2が入っていないことがわかります。


    (※2) CO2は800mより深い地層では液体でも気体でもない超臨界状態になります。超臨界状態は、液体と同じような密度でありながら気体のように拡散しやすい状態で、効率よく地層中に入れることができます。


    (※3) 貯留層を構成する主な岩石である砂岩と遮へい層を構成する主な岩石である泥岩の写真を図2に示します。

    砂岩と泥岩

    図2 砂岩と泥岩

    砂岩に比べて泥岩は粒子の大きさがずっと小さいため、粒子間の隙間も砂岩よりはるかに狭くなっています。


    (※4) 貯留層も遮へい層も基本的には塩水で満たされています。貯留層へ圧入されたCO2は塩水より密度が小さい(軽い)ので、浸透性が比較的高い貯留層では、CO2は上向きの力である浮力が原因で上方へ移動しようとします。しかし、遮へい層は隙間が狭いため、CO2が遮へい層に入り込むためには、遮へい層内の塩水よりかなり高い圧力になる必要があります(西澤ほか, 2016)。また、たとえ遮へい層に入り込める程度まで圧力が上がったとしても、浸透性の違いで貯留層に優先して広がることになります。事前調査はこのような特徴を持つ貯留層と遮へい層を探すために行われます。


    (※5) 二酸化炭素(CO2)はガスボンベのような容器に入れて埋めるのではなく、岩石にある細かい隙間に入れます。隙間には地層ができるときに海水や淡水が閉じ込められており、石油や天然ガスもそのような隙間に溜まっています。


    参考文献

    • 西澤修, 張毅, 伊藤拓馬, 薛自求, 小暮哲也, 木山保. (2016). 岩石物性研究とCO2地中貯留 I: キャピラリー圧支配領域でのCO2流動特性と各種スケールの不均質がトラッピングに及ぼす影響. 物理探査, 69(2), 127-147.
      https://doi.org/10.3124/segj.69.127
  • Q二酸化炭素(CO₂)を貯留できる場所はたくさんあるのですか?

    A

    日本には海底下を含め約2,400億トンの二酸化炭素(CO2)を貯留できる可能性があると推計されています。また、海域を限定したより詳細な最新の調査では、現時点で160億トンを貯められることがわかってきました(経済産業省, 2022;※1)。政府は目安として2050年に年間1.2~2.4億トンのCO2を貯留することを示しており(※1)、160億トンは約100年分に相当します。詳細な調査が進めば、160億トンという数値がさらに増えていくと考えられます。

    (解説)

    (※1) CO2の貯留が可能と考えられる場所は日本全国に分布しています(図1)。

    国内のCO2貯留可能量とその分布

    図1 国内のCO2貯留可能量とその分布(経済産業省, 2022より)


    参考文献

  • Q貯留された二酸化炭素(CO₂)はどうなるのですか?

    A

    二酸化炭素(CO2)を貯留する地層の中にはもともと塩水が充満しています。CO2は塩水を押しのけて地層の隙間に侵入します。その後、浮力によってゆっくり上方に移動しますが、真上にある地層(遮へい層)が蓋になって動けなくなります。時間が経つにつれて、塩水に溶けたり、化学反応して固体になったりするCO2が増えます。CO2が溶解した塩水は重くなり沈み、固体は動けなくなるのでますます地層の外に漏れにくくなります(※1, ※2)。

    なお、自然状態でも地中にCO2が大量に溜まっている場所が数多くあります(※3)。

    (解説)

    (※1) 貯留層の中のCO2の移動や変化のイメージ図を図1に示します。

    choryuso_co2_henka20240919.png図1 貯留層におけるCO2の変化


    (※2) 貯留された直後のCO2は上昇しやすい形態、動ける形態が多いのですが、時間の経過とともに上昇しにくい形態、動きにくい形態が増えていきます(図2)。

    地中に注入されたCO2の変化のイメージ

    図2 地中に注入されたCO2の変化のイメージ(IPCC, 2005の図をもとに作図)

    圧入直後は遮蔽層がCO2の上昇を防ぐ「構造/層位トラップ」の割合が大きいですが、時間が経つとCO2が動けない「残留CO2トラップ」、「溶解トラップ」、「鉱物固定」の割合が増えます。


    (※3) CO2を地中に貯留することは人工的に不自然な状態を作っているわけではありません。自然状態でもCO2が地中に溜まっているところはたくさんあります(図3)。

    CO2が自然に蓄積している例

    図3 CO2が自然に蓄積している例(IPCC、2005を一部改変)


    参考文献

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