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ISO/TC265とは

背景

二酸化炭素回収・貯留(CCS:Carbon dioxide capture and storage)は、工場や発電所などから発生するCO2を分離回収し、地中貯留に適した地点まで輸送し、長期間にわたり安定的に地中貯留する技術であり、CO2の大気中への排出量削減効果が大きいこと等から、地球温暖化対策の重要な選択肢の一つとして期待されています。すでに諸外国では、多くの実証試験に加え、商業規模でのCCS事業も実施されています。
我が国においても大規模なCCSプロジェクトが実施されており、苫小牧市では2016年4月から年間10万トン以上のCO2を海底下へ貯留するCCSの実証試験が実施されていました。2019年には目標の30万トン圧入を達成し、現在は圧入停止後のモニタリングが行われています。

一方、CCSの普及に関する課題として、「高コスト」、「CO2排出削減を行うインセンティブの欠如」、および「住民合意に係わる不確実性」などが挙げられます。
近年、これらの課題の解決に加えて、CCSに係わる法規制と標準に関する枠組みが求められています。

これまでCCSの推進者は、CCSプロジェクトの選定、設計、開発、操業、および閉鎖に対して、関連したガイドライン、ベストプラクティス、および標準を利用しているのが現状であり、CCSプロジェクトの固有の要件を扱うCCSに特化した標準が必要とされていました。CCSの国際標準化によって、CCSプロジェクトが安全と環境面で、国際的に合意された知見に沿っていることが保証されるため、事業者、規制当局、および国民にとって大きな利益が期待され、安全で適切なCCSの普及に貢献します。

設立経緯

2011年5月にカナダからCCS(Carbon dioxide Captureand Storage)について、国際標準を策定する技術活動の新分野提案があり投票の結果、ISOの技術管理評議会(TMB)はCCSについての新規の専門委員会(ISO/TC265)を設立することを2011年10月に決定しました。

RITEは、ISO/TC265の国内審議団体として、日本産業標準調査会から2011年12月に承認され、CCSの国際標準策定に積極的に活動しています。

タイトル

Carbon dioxide capture, transportation and geological storage.
(二酸化炭素回収・輸送・地中貯留)

スコープ

二酸化炭素回収・輸送・地中貯留(CCS)分野における設計、建設、運用、環境計画とマネジメント、リスクマネジメント、定量化、モニタリングと検証、及び関連活動の標準化。

議長、幹事

議長 カナダ
幹事 カナダ

参加国、リエゾン機関   2024年6月10日時点

【Pメンバー】28ヶ国

オーストラリア、オーストリア、ブラジル、カナダ、中国、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、アイスランド、インド、インドネシア、アイルランド、日本、韓国、マレーシア、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、ロシア連邦、サウジアラビア、シンガポール、南アフリカ、スウェーデン、スイス、アラブ首長国連邦、英国、米国

(Participating memberは、専門委員会において積極的に参加することを表明しているメンバーで、専門委員会内での審議に参加し、投票の義務を負う。)

【Oメンバー】17ヶ国

アルゼンチン、ベルギー、チェコ、エジプト、ハンガリー、イラン、イタリア、ルクセンブルク、メキシコ、ニュージーランド、ポーランド、カタール、ルーマニア、セルビア、スペイン、スリランカ、タイ

(Observing memberは、専門委員会にオブザーバーとして参加することを表明しているメンバーで、専門委員会へコメントの提出はできるが、投票権は持たない。(ただし、DIS(国際規格案)、FDIS(最終国際規格案)に関しては反対票のみ有効である。))

【リエゾン機関】10機関

CO2GeoNet、CSLF、EIGA、GCCSI、IEA、IEAGHG、IOGP、WRI、ZEP、OGCI

※OGCIはカテゴリーC リエゾン

ISO/TC265および国内の体制図

ISO/TC265および国内の体制図

 

ISO/TC265の体制

ISO/TC265の下に6つのワーキンググループが設立されています。それぞれのワーキンググループは以下のような目的の元で標準化を推進しています。

  • ・WG1(回収):CO2の発生源(火力発電所、製鉄所、セメント/石油精製等の化学プラントなど)において発生するCO2を回収する回収システムの技術とプロセスを対象として標準化を行います。
  • ・WG2(輸送):CO2の発生源から永久貯留施設等へのCO2輸送(船舶以外)を対象として標準化を行います。
  • ・WG3(貯留):回収したCO2の地中貯留を対象として標準化を行います。
  • ・WG5(クロスカッティングイッシュー):CCSの各分野(回収・輸送・貯留)において横断的に関連する事項を対象にして標準化を行います。
  • ・WG6(CO2-EOR):CCSをEOR(Enhanced Oil Recovery)のために適用する場合を対象として標準化を行います。
  • ・WG7(船舶輸送):CO2の発生源から永久貯留施設等へのCO2船舶輸送を対象として標準化を行います。

国内の体制

ISO/TC265国内審議委員会及び6つの国際WGに対応する5つの国内WGが設立され、国内関連部門から広く専門家に参加していただき標準化活動を行っています。2022年度よりWG7新設に対応する形で、輸送WGにWG2及びWG7に対応するタスクチームを設けています。ISO/TC265からの情報、提案を元に議論し日本国内のコンセンサスを得る、反対に日本からの意見をISO/TC265へ提案して国際のコンセンサスを得る等の活動を通じて標準化を推進しています。RITEは国内審議委員会並びに各WGの事務局として活動し、国際と国内の場において標準化活動を先導するとともに、専門家に議論へ参加していただき、それぞれの標準化に協力しています。

ISO/TC265発行文書(2024年6月10日時点)

2016年 5月 TR27912(WG1:様々な産業分野のCO2回収技術の技術報告書)
2016年11月 ISO27913(WG2:CO2パイプライン輸送の国際規格)
2017年 8月 TR27915(WG4:定量化と検証の技術報告書)
2017年10月 ISO27914(WG3:陸域と海域貯留の国際規格)
2017年12月 ISO27917(WG5:用語の国際規格)
2018年 4月 TR27918(WG5:リスクマネージメントの技術報告書)
2018年 9月 ISO27919-1(WG1発電分野燃焼後回収技術性能評価の国際規格)
2019年 1月 ISO27916(WG6CO2-EORの国際規格)
2020年 5月 TR27921(WG5:CO2流組成の技術報告書)
2021年 2月 TR27922(WG1:セメント産業のCO2回収技術の概要の技術報告書)
2021年10月 ISO27919-2(WG1:発電分野燃焼後回収性能維持の国際規格)
2022年 1月 TR27923(WG3:圧入オペレーションと圧入設備、モニタリングの技術報告書)
2023年 7月 TR27925(WG5:フローアシュアランス)

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