MGM 組合(RITEと住友化学(株)で構成)と三菱化工機(株)は、MGM組合がこれまで高圧ガス(二酸化炭素(CO2)/水素(H2))源である IGCC、水素製造プラントを適用先として想定し開発してきた高圧向けCO2分離用分子ゲート膜の中圧水素製造システムへの適用性の検討を進めています。
石炭火力発電所等の実燃焼排ガスを対象とした固体吸収材によるCO₂分離・回収技術について、川崎重工業(株)と連携してスケールアップ試験を実施しています。RITEでは高効率CO₂分離回収基盤技術開発(固体吸収材の性能向上・製造技術開発、パイロット試験用固体吸収材の製造、高度シミュレーション技術の開発と最適プロセス検討)を担当しています。
天然ガス燃焼排ガスからの低コストCO₂分離・回収プロセス商用化の実現
天然ガス燃焼排ガスからの低コストCO₂分離・回収プロセスを商用化するのに必要な技術開発を千代田化工建設(株)、(株)JERAと連携して実施中です。CO₂濃度は石炭燃焼排ガス(13%)と比較して低い(4%程度)一方で、酸素濃度は10%程度と高いため、低いCO₂濃度においても高いCO₂吸収性能と酸化に対する高い耐久性を有する固体吸収材の開発が必要です。
大気中からのCO₂を直接回収(DAC:Direct Air Capture)する技術の実用化に向けて、分離回収エネルギーを大幅に低減するCO₂吸収材とシステムを金沢大学および三菱重工業株式会社と連携して開発しています。
高炉法におけるCO₂削減要素技術としてのCO₂分離・回収技術の開発(GREINS)
化学吸収法におけるブレークスルー技術として、従来のアミン系化学吸収液で一般的であった溶媒の水の一部を非水溶媒に置き換えた「混合溶媒系吸収液」や、さらに触媒を添加することで溶液の比熱やCO₂との反応熱を低減した高性能吸収液の開発、実用化に必要な安全性・環境性の評価を実施しています。
CO₂分離素材開発のための標準評価法の確立および実ガス試験センター整備
発電所排ガスおよびボイラー排ガス等を想定した燃焼排ガスを対象とするCO₂分離素材を評価するために、3種類のCO₂分離回収技術(化学吸収法、吸着法、膜分離法)について、実ガス試験評価装置をRITE本部研究所内に設置するとともに標準評価法を策定します。2022年度は、標準評価法の素案作成および実ガス試験センターの基本設計を実施しました。2023年度から設備設計に着手し、2024年度の完成を目指します。
膜反応器による高効率かつ省エネルギー型のCO₂有効利用技術、特にCO₂を原料としたメタノール合成技術の開発をJFEスチール株式会社と連携して実施しています。
ヘリウムガスの価格高騰、調達困難が世界的に大きな問題となっており、将来的な日本へのヘリウム安定供給を目指して、海外の窒素主体の不燃性ガス田のヘリウム権益を獲得すべく、競争力強化のためヘリウム分離膜を開発します。RITEでは小分子の透過性に優れると考えられるシリカ膜を選定し、実用化に向けて検証が必須な要素技術である長尺・大面積化技術を開発します。
高性能CO₂分離膜モジュールを用いたCO₂-H₂膜分離システムの 研究開発
IGCCプラント、水素製造プラントなどの高圧ガスからCO₂を分離・回収するのに有効な膜分離システムの実用化研究を、次世代型膜モジュール技術研究組合(RITEおよび住友化学株式会社で構成)の一員として実施しています。
石炭ガス化複合発電(IGCC:Integrated coal Gasification Combined Cycle)等で発生する圧力を有するガス源から、CO₂を高効率で分離する膜モジュールシステムの研究開発を実施しました。2020年度の石炭ガス化ガスを用いた加速試験で分離性能の初期耐久性を確認し、膜エレメントサンプルの構造評価により膜材料の劣化が無いことを確認しました。 また、経済性評価においては、単膜の模擬ガスによる分離性能結果(初期性能)に基づく試算の結果、目標性能を達成し、膜エレメントについてはエレメント構造、膜材料上の改良結果を反映することで目標性能を達成できる目処を得ました。さらに、膜モジュールシステムの概念設計を行い、技術的に実現可能なシステム構成の目処を得ました。
先進的な固体吸収材法によるCO₂分離回収技術の実用化を促進することを目的に、固体吸収材製造技術の合理化、回収プロセスの最適化検討、ベンチスケール回収試験、実ガス曝露試験、石炭火力発電所におけるスケールアップ試験装置の設計、商用化に向けたシステム検討を実施しました。
CO₂を原料とするメタノール合成に関する開発状況および技術課題の調査ならびにH₂O分離膜による平衡シフト効果で高効率なメタノール合成が可能な膜反応器(メンブレンリアクター)の膜反応シミュレーションモデルを作成しました。また高い水熱安定性を有する新規脱水用ゼオライト膜の開発に成功するとともに、その新規ゼオライト膜を適用したメタノール合成用膜反応器の開発において膜反応器の有用性を実験的に示し、実験値とシミュレーション値が良好な一致を示すことを確認しました。
膜反応器を用いたメタン直接分解によるCO₂フリー水素製造技術
シェールガス革命以降、長期に安定して供給が可能であるメタンに着目し、これを熱分解することで水素と固体のカーボンを製造し、副生カーボンを販売することで水素の製造コストを低減する技術検討を実施しました。メタン直接分解は水素生成によりCO₂を排出しない反応ですが、高い転化率を得るためには反応温度を高温にする必要があり、それに伴いCO₂が多く発生します。そこで、この反応系に膜反応器を適用し、反応系外に水素を引き抜くことで、反応を水素生成側にシフトさせ、より低温側で高い転化率を得ることにより、高効率、省エネルギーな水素製造を可能とすることを目指しました。
水素分離膜を用いたメチルシクロヘキサンからの脱水素プロセスの開発
水素の効率的な輸送・貯蔵技術としてのメチルシクロヘキサン(MCH)脱水素用メンブレンリアクター開発において、実用化量産時のモジュール構造を提案するとともに、メンブレンリアクターの実運転での耐久性などについて検討を加え、実用化に必要な技術に目途を付けました。