2015年12月のCOP21で「パリ協定」が採択され、異常気象など気候変動による悪影響を最小限に抑えるために、産業革命前からの世界の平均気温の上昇を「2℃より充分低く保ち、1.5℃に抑える努力を追求する」ことが目標とされました。その後、さらなる気温上昇や世界規模で発生している甚大な自然災害など危機感の高まりを受けて、先の2021年11月のCOP26におけるグラスゴー気候合意では、気温上昇幅を「1.5℃に制限する努力の追求を決意」とされ、世界で初めて1.5℃が数値目標となりました。IPCCによると、1.5℃目標のためには、2010年比で2030年までにCO2を45%削減し、2050年までにネットゼロを達成する必要があります。
我が国においては2020年10月の「2050年カーボンニュートラル」宣言と、2020年12月に策定(2021年6月詳細策定)された「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を受けて、様々な方面からの地球温暖化防止のための取り組みが進められています。CCUS (Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)/カーボンリサイクルは、主要な取り組みの1つであり、カーボンニュートラルを可能とする重要な革新的技術として位置付けられ、「CO2を炭素資源として捉えて、分離・回収したCO2の燃料や素材への再利用(CCU)」や「分離・回収したCO2の地中貯留(CCS)」との組合せにより、大きなCO2削減効果が見込まれます。CO2分離・回収技術はCCUS推進のための基盤技術であり、2050年度までにCO2分離・回収コスト1,000円/t-CO2を目指し開発を進めることや様々なCO2排出源に対応する分離・回収技術を確立していくことが目標として示されています。また、カーボンニュートラルを実現するためには、大気中のCO2濃度を低減するする技術、すなわちネガティブエミッション技術の導入が不可欠であり、特に大気中からCO2を直接回収するDirect Air Capture(DAC)が注目されています。2021年7月に改訂された「カーボンリサイクル技術ロードマップ(経産省)」では、進展のあった新たな技術分野としてDACが追記されました。二酸化炭素の除去(CDR)、回収・利用・貯留(CCUS)においてCO2を循環的に利用したり削減したりする取り組みであるカーボンマネジメントが本格化しています。
このような背景を受けて、様々なCO2排出源に対し、最適な分離・回収技術を提案することにより、CCUSの実用化を推進する必要があります。地球温暖化防止対策としてCO2の大規模削減が期待できるCCSを早期に導入、実用化するためには、大規模発生源等から排出されるCO2分離・回収コストの低減が重要です。
図1に各種大規模排出源と、それに対応するCO2分離・回収技術を示します。
図2にRITEが保有する各種CO2分離・回収技術の位置づけを示します。
図3にRITEにおけるCO2分離回収技術の研究開発のこれまでの経緯と今後の展開を示します。