センター長ご挨拶

オープンイノベーションにより、早期に無機膜の産業化を

このほどRITEの新しい試みとして、オープンイノベーションを推進し、無機膜を用いた革新的環境・エネルギー技術の実用化・産業化を図る無機膜研究センターを立ち上げました。特に無機のガス分離膜分野は今後の産業化が強く望まれる分野であることから、それを早期に実現するためには、オープンイノベーションを推進して、メーカーおよびユーザー企業とこれまで以上に有機的に連携した新しいタイプの共同研究・技術開発が必要です。RITEの取り組みを新たな次元に深化させることになりますので、従来の「グループ」とは異なる「センター」という名前を付した新しい組織としました。

無機の気体分離膜としては、すでにゼオライト膜がアルコールの脱水プロセスへの応用として実用化されていますが、いまだ規模は小さく、今後の広範な応用分野の開拓が望まれます。また、水素分離を主な分離対象としたシリカ膜は、ラボレベルでは高性能な膜がすでに開発されていますが、耐久性の検討や大面積のモジュール化などは未だ手つかずの状態です。パラジウム膜も耐久性に課題を残しており、いまだ実用段階には至っていません。

RITEでは、シリカ膜、ゼオライト膜、パラジウム膜の研究開発をすでにおこなっていますが、これらの研究、技術開発をオープンイノベーションにより飛躍的に推進し、早期の実用化につなげたいと考えています。そのため、センターでは研究部門の他に、産業連携部門を設け、産業界から会員を募って産業化戦略協議会を設置・運営します。ここではセンターと産業界が共同して無機膜を用いた革新的環境・エネルギー技術の実用化・産業化に向けた検討を行います。それにより、わが国が誇る無機膜技術を一日も早く実用化につなげ、無機膜産業の確立を目指したいと考えています。

センターでは、各種無機膜の研究分野を先導している大学の研究者の皆様、水素エネルギーや燃料電池研究をリードしている研究者の皆様を、アドバイザーとして迎えています。RITEの研究スタッフ、アドバイザーの皆様とともに、無機膜産業の確立に興味をお持ちの無機膜メーカー、膜プロセスを設計するエンジニアリングメーカー、そしてエネルギーや化学、水素利用先の燃料電池を使ったいろいろなシステムの導入を考えるユーザー企業の皆様、みんなで力を合わせて無機膜の産業化に取り組みましょう。

無機膜研究センター センター長 中尾 真一