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低コストかつ高耐久性を有する細孔内充填型パラジウム(Pd)膜の開発

 RITEでは水素分離プロセスへの適用を目指し、細孔内充填型パラジウム(Pd)膜の研究開発に取り組んでいます。
 図1にパラジウム(Pd)膜を使った水素透過機構を示します。供給側の水素ガスがパラジウム(Pd)膜表面に吸着、解離、膜内を溶解拡散することにより透過すると考えられています。透過した水素原子は膜裏面で再結合、脱離することにより透過側に高純度の水素ガスを精製することが可能になります。
 格子間に水素原子しか侵入できないことを利用して分離を行うため、理論上の選択性が極めて高いのが特徴で、99.9999%以上の高純度水素に分離することが可能です。

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 このように、パラジウム(Pd)膜は優れた水素分離性能を有していますが、従来型パラジウム(Pd)膜は図2に示すように、表面上にパラジウム(Pd)膜の層があるため、①基材との熱膨膨張率の差による膜剥離、②膜の水素脆化、③飛翔物による膜の破損、④膜近傍に設置した触媒中の金属と膜の合金化による耐久性の低下、⑤高価なパラジウム(Pd)を多く使用するため高コスト等の課題がありました。(表1)

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 RITEではこれらの課題を解消する可能性を有する細孔内充填型パラジウム(Pd)膜の研究を進め、セラミック基材の表面ではなく内部にパラジウム(Pd)を充填し膜を成形(図3)することで、従来型パラジウム(Pd)膜より耐久性が向上することを確認しています。

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 細孔内充填型は図4に示すように、基材である多孔質セラミックス支持体内に膜厚数μmの薄いパラジウム(Pd)膜を成形します。多孔質の百数十nmの隙間にPdが半粒子状態で存在しているのが特徴です。この様な構造にすることで、従来型の課題である①基材との熱膨膨張率の差による膜の剥離や②水素脆化の耐性が向上しています。また、基材表面から少し内側にパラジウム膜を有する構造の為、基材表面層が保護層の役割を果たし③飛翔物による膜の破損や④触媒との接触による合金化を防ぐことが可能になり、耐久性が向上しています。さらに、⑤パラジウムが薄膜で成形充填されている膜構造なのでパラジウムの使用量を従来型の約3分の1とすることが出来るため、コスト低減が可能と考えています。

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 このような細孔内充填型であるRITEパラジウム膜の性能は、従来型と同等の水素透過性能、選択性を有している事を確認しています。

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 RITEでは現在、パラジウム(Pd)膜の性能向上やメンブレンリアクターへの適用性評価等、実用化に向けて研究開発を進めております。
 また本細孔内充填技術はパラジウム(Pd)以外の金属にも適用可能であり、ユーザーの方々との共同研究を通じて、様々なニーズに対応していきたいと考えています。