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対向拡散CVD法によるシリカ膜の開発

 高温で水素を選択的に透過できる無機分離膜であるシリカ膜は、ゾルゲル法もしくは化学蒸着(Chemical Vapor Deposition:CVD)法によって製膜されます。

 CVD法は多孔質基材上へ気化させたシリカ源を導入・熱分解を行い、反応ガスと反応させることにより、基材上に薄膜を作製することが可能であり(図1)、この時の反応ガスをシリカ源と同方向に導入、あるいは反応ガスを用いず熱分解のみによって製膜することを一方供給CVD法、反応ガスをシリカ源と対向させて導入することを対向拡散CVD法といいます。

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 対向拡散CVD法は図2に示すように、基材の外側にシリカ源を、内側に反応ガスとなる酸素を供給することで、基材細孔内でアモルファスシリカ膜が形成されます。細孔内で膜が形成され、原料および反応ガスが通過しにくくなることにより反応が停止し、膜が形成されていない所ではさらに反応することにより均質な膜を得ることができます。
 また、分離機能層が表面だけではなく、細孔内に存在することから、クラックや触媒による劣化を防止することも可能です。

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 このように対向拡散CVD法によって細孔内に形成されたシリカ膜は、使用するシリカ源などによって細孔径を制御することができ、分子ふるいの特性を活かして様々なガス分離に用いることが可能です。
 例えば、有機ハイドライドからの脱水素反応(MCH→3H2+トルエン(Tol))に用いる膜反応器では、触媒との反応によって生じる水素とトルエンのうち、分子ふるいによってトルエンを通さず水素を選択的に引き抜くことで高い転化率を得ることができます。この時使用するシリカ膜は、より水素の透過性の高いDimethoxydiphenylsilane(DMDPS)由来のシリカ膜が効果的です。また、メタンの水蒸気改質に用いる膜反応器では、シャープな細孔径を有するTetramethoxysilane(TMOS)由来のシリカ膜を使用することで水素と二酸化炭素を効果的に分離することが可能です。(図3、図4)

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 RITEではこの対向拡散CVD法によって、世界トップクラスの高い水素透過性を持つシリカ膜の作製に成功しています。(図5)

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 また、対向拡散CVD法の利点である、長さ方向に均一な膜を得られる製膜法により、髙い水素選択透過性を維持したまま、図6に示すように長尺化、大面積化が可能となり、様々な分離系への適用が可能です。

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