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2017年6月28日
小田潤一郎主任研究員と魏啓為研究員がエネルギー・資源学会の論文賞、茅賞をそれぞれ受賞しました
この度、システム研究グループの小田潤一郎主任研究員が一般社団法人エネルギー・資源学会の論文賞を、魏啓為研究員が茅賞を受賞しました。
論文賞は、「エネルギー・資源学会論文誌」に掲載され、エネルギー・資源および環境に関する科学技術の発展に多大な貢献をした研究論文の著者に授与されるものです。また、茅賞は、エネルギー・資源・環境に関し、同学会の研究発表会あるいはコンファレンスで研究発表を行い、特に優秀な研究業績が認められた新進気鋭の研究者に授与されるものです。
2017年6月7日に砂防会館にて学会の総会に引き続いて表彰式が執り行われ、小田主任研究員と魏研究員に表彰状が授与されました。
小田主任研究員 魏研究員
受賞者 | 小田 潤一郎(システム研究グループ 主任研究員) |
賞の名称 | 一般社団法人エネルギー・資源学会 論文賞 |
論文題目 | リアル・オプション法による石炭火力及び二酸化炭素回収貯留技術の投資分析 |
研究成果の概要 |
二酸化炭素回収貯留技術(以下、CCS)は大幅なCO2排出削減を進めるための有効な選択肢の一つと考えられますが、その普及にはいくつかの障壁を乗り越える必要があります。論文では、その障壁の一つである事業者から見たCCSの投資リスクに着目し分析を行いました。とりわけ電力自由化という流れの中で、事業者は投資リスクに見合った収益が見込めるか、これまで以上により慎重な投資判断を行うことが予想されるためです。 日本において、将来のLNG価格と炭素価格が不確実である場合(気候変動政策の不確実性を炭素価格で代表)に、CCS投資の経済合理的な判断がこれらの不確実性を想定しない場合と比較してどのように変化しうるのか、リアル・オプション法を用いて分析しました。 その結果、不確実性を想定しない場合と比較し不確実性を想定した場合(こちらが現実により近い)は、CCS投資が経済性を持つために1.5倍~2倍程度の炭素価格水準が必要となる分析結果を得ました。このように不確実性を考慮するとCCS投資の閾値が大きく上昇するため、CCSの投資を促すためには単に高い炭素価格が必要であるのみならず、安定的で予見性のある炭素価格が求められると言えます。 |
受賞者 | 魏 啓為(システム研究グループ 研究員) |
賞の名称 | 一般社団法人エネルギー・資源学会 茅賞 |
業績テーマ | 気候変動緩和とPM2.5大気濃度低減の双方を考慮したエネルギーシステムの評価 |
研究成果の概要 |
共に2015年に採択されたパリ協定と持続可能な開発目標(SDGs)は、国際社会が目指す持続可能な発展において、極めて重要な方向性を示しています。今後の気候変動対策では、様々なSDGsとのシナジー・トレードオフを意識し、高位目標である「持続可能な発展」を達成できるような社会・経済・エネルギーシステムの転換および形成が強く求められます。本研究では、弊所で開発している世界エネルギー・温暖化対策評価モデルDNE21+を新たに拡張することで、気候変動緩和と大気汚染(PM2.5大気濃度)低減という二つの異なる政策目標に対して、コスト効率的なエネルギーシステムを分析しました。そして、エネルギーシステムの転換を通じた気候変動緩和策による副次的な大気汚染低減とその逆の影響と、双方の政策目標を統合的に目指した場合における対策コストの変化という二種類のコベネフィットを、定量的に評価しました。その結果、インドなどの発展途上国でコベネフィットのポテンシャルが大きく、省エネ対策(エネルギー効率向上)と燃料転換対策がコベネフィットを生み出し、気候変動緩和策の方がPM2.5対策よりもエネルギーシステムの転換に与える影響が大きい一方、バイオマス利用が両目標達成におけるトレードオフとなることを示しました。ただし、気候変動緩和とPM2.5低減のコベネフィットは大きいものの、PM2.5の健康影響被害が大きい場合は、脱硫・脱硝対策によるPM2.5低減は費用効果的な対策であるため、優先的に進めることも対応方策としては重要であることも指摘しました。 |