プロジェクト

CO₂有効利用(CO₂を原料とするメタノール合成)技術開発

事業名称: 次世代火力発電等技術開発/次世代火力発電基盤技術開発/CO₂有効利用技術開発
委託元: NEDO
再委託先: 国立大学法人山口大学、国立大学法人京都大学 大学院 工学研究科
事業期間: 2017年10月27日~2020年2月28日

事業内容

 供給安定性および経済性に優れた天然資源である石炭を利用した火力発電は、長期エネルギー需給見通しにおいて、2030年度の国内の総発電電力量の26%を担う重要な電源であると位置づけられています。しかし、これら石炭火力発電はCO2排出量が比較的多く、将来的にCCUが検討されています。現時点ではCO2の大規模処理は困難であるものの、有価物の製造等により利益や価値を創出する可能性も考えられます。そこで本事業では、2030年度以降を見据え、我が国の優れたクリーンコールテクノロジー(CCT:Clean Coal Technology)等に更なる産業競争力を賦与することが可能なCCU技術を確立するために、CO2有効利用品製造プロセスやシステムにおけるCCU技術の総合評価を実施しました。

 RITEでは、CO₂を原料とするCCUメタノール合成(CO₂ + 3H₂ ⇄ CH₃OH + H₂O)を対象に2018年以降の開発状況および技術課題を調査し、メタノール合成プロセス効率化のための反応条件や触媒等について、有望な文献の抽出を実施しました。反応条件については、低温・高圧ほどメタノールへの平衡転化率およびメタノール選択性が高く、熱力学的に有利であること、メタノール合成触媒については、貴金属触媒 (Pd系) の一部で従来触媒 (Cu/Zn系) と同等以上の性能が得られ、反応効率を改善できる可能性があることが解りました。

 原料ガスがCO₂の場合にはワンパスの転化率が低いことに加えて生成した水による触媒性能低下が懸念されるため、反応系外へ水を除去するプロセスが有望です。CCUメタノール合成プロセスの改良技術として、高効率なメタノール合成が可能な脱水膜を具備した膜反応器(メンブレンリアクター)について、スケールアップ設計時の反応管形状および運転条件による影響を評価するための膜反応シミュレーションモデルを作成しました。本モデルを用いたケーススタディーの結果、最適な反応管外径内径比や原料ガス空間速度などを明らかにしました。
 また高い水熱安定性を有する新規脱水用ゼオライト膜の開発に成功するとともに、その新規ゼオライト膜を適用したメタノール合成用メンブレンリアクターの開発においてその有用性(触媒反応器に比べて約3倍の反応効率を実現)を実験的に示し、実験値とシミュレーション値が良好な一致を示すことを確認しました。さらに新規ゼオライト膜を用いたメンブレンリアクターと市販されている脱水用ゼオライト膜を用いた場合を比較すると、約2倍の転化率を示すことも明らかとなりました。

 

  図 メタノール合成用膜反応器の性能(実験およびシミュレーション結果)

 

 以上の検討を通じて、高い透過分離性能を有する新規脱水用ゼオライト膜の開発に成功するとともに、その脱水膜を具備したメタノール合成用メンブレンリアクターの有用性を実証することに成功しました。現在、脱水膜の更なる高性能化および実用化に向けた長尺化検討を進めています。

 なお開発した脱水用ゼオライト膜は水/メタノール混合系のみならず、様々な脱水用途(たとえば水/エタノール、水/IPA等)においても高い水の透過選択性を有しており、それら分離系への適用可能性を有しています。

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