約束草案の排出削減努力の評価と世界排出量の見通し2015年11月16日
2020年以降の各国温室効果ガス排出削減目標(約束草案(INDCs: Intended Nationally Determined Contributions))の提出が進む中、2015年10月1日までに約束草案を提出した国を対象に、各国の排出削減努力を分析、評価しました。
約束草案の排出削減目標に実効性を持たせ、また可能であれば更なる排出削減を促していくために、「排出削減努力」を適切に評価することが重要と考えられます。ただし、排出削減努力の公平性・衡平性を一意に決める指標は存在しないため、妥当性の高い指標を複数用いて多面的に評価しました。
その上で、複数の指標を総合化し、排出削減努力(野心度)を世界各国間でランク付けを行いました。
また、約束草案実現時に期待される世界の温室効果ガス排出の見通しと、予想される気温上昇についても評価を行いました。
実効ある排出削減のためには、適切なレビューを伴ってPDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルを回していくことが重要であり、RITEでは引き続き、最新のデータに基づいて継続的に分析、評価を行っていきます。
- 約束草案の排出削減努力の評価と世界排出量の見通し(PDFファイル3,472KB)
<英語版>日本のエネルギーミックスと約束草案の評価はこちら
- Evaluations on Emission Reduction Efforts of the INDCs and the Expected Global Emissions(PDFファイル2,123KB)
排出削減努力の評価指標の重み付けについて、自由に変更できるようにしました。総合評価「努力の度合い(野心度)」の値、すなわち各国のランク付けが変わります。
「排出削減努力」を評価しうる指標として、7つの指標を用いています。これら指標を6種類にカテゴリー化して、それらに重み付けをすることで、総合評価「努力の度合い(野心度)」として1つ値に算定しました。
RITEで行った「努力の度合い(野心度)」の各国ランク付けは、本ページに「標準設定」として掲載のような重み付けで評価しましたが、その重み付けの値については強い論拠がありません。重み付けの値の変更、それによる感度解析等の検討余地は残っています。
そこで、本分析で用いた指標の重み付けが誰でも計算できるようにしました。それによって、総合評価「努力の度合い(野心度)」の値が変わりますので、自由に重み付けを変更してください。
使い方:各指標のバーのつまみを左右に動かすと、重み付けの値が変わります。それに連動して、棒グラフの総合評価の値も変更します。RITEの分析で用いた重み付けが標準設定されています。
簡易版と詳細版の2種類があり、詳細版は重み付けが2段階層からなります。
- 排出削減努力の評価指標
評価指標の説明および重みづけの説明はページ下部もあわせて参照ください。
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- 努力の度合い(野心度)
- 排出削減努力の評価指標
排出削減努力評価の手法 | 概要 | 留意点等 | |
排出量基準年比削減率 (OECD諸国もしくは附属書I国にのみ適用) |
2005年比 | ベースラインで排出が横ばいに近い場合には、単純に削減率の大きさを比較することで、BAU比削減率の代用とできる(BAU推計が不要となるメリット有)。OECD諸国等にのみ採用(潜在的に大きな排出増が予想される国に適用するには不適当なため) | 比較的多くの国が基準年としている。(なお、1990年比は今後の削減努力を測るには古すぎて不適切と考えられる) |
2012年比 (or 2010年比) |
最新実績からの削減率となるため、今後の削減努力の計測として相対的に良い。 | ||
一人あたり排出量 (非OECD諸国かつ非附属書I国にのみ適用) |
絶対値水準 | OECD諸国等については、この指標を採用せず、基準年比削減率で評価 | 経済活動の大きさや国土の状況等に依拠しやすく、排出削減努力の指標とは言い難い面がある。 |
GDP比排出量 (CO2原単位) |
絶対値水準 | 経済活動の大きさに見合ったCO2排出量水準を表すもの | GDPが低い国は悪い数値になりやすい。産業構造に依拠する。 |
改善率 (2012年(or 2010年)比) |
排出量基準年比削減率に比べ経済成長率の違いが除きやすく、削減努力を測りやすい | GDPが低い国は、高いGDP成長率に伴って原単位改善率が良くなりやすい。 | |
BAU比削減率 | 経済成長の違いなどを考慮できる。 | 過去の省エネ努力(更なる省エネの困難さ)、再エネ等の削減ポテンシャルは無視される。 | |
CO2限界削減費用 (炭素価格) |
経済成長、過去の省エネ努力、再エネなどの削減ポテンシャル等、各国の諸々の差異を含む指標で、削減努力の計測として妥当性が高い。 | エネルギー税などによる既往の対策は外枠となる(ただしそれによって省エネが既に実現していれば限界削減費用も高く推計されるため、これも考慮されたものとも考えられる)。 | |
2次エネルギー価格 (電力、ガス、ガソリン・軽油) |
2012年 (or 2010年)実績で加重平均) |
限界削減費用は追加的な削減努力を表しやすい指標だが、本指標はベースラインに含まれる削減努力も含むような指標と考えられる。 | 事後評価であれば、市場価格で観測ができるが、事前評価においてはモデル推計となり、推計の不確実性が高い。 |
GDP比削減費用 | 限界削減費用は、経済力に応じた負担能力が考慮されないが、本指標は負担能力を含めた評価が可能 | モデル推計となり、推計の不確実性が高い。 |
- 排出削減努力の評価指標の重み付け(標準設定)
排出削減努力評価の手法 | ランク付けにおける重み付け | ||||
1 | 基準年比削減率 (OECD諸国もしくは附属書I国にのみ適用) |
2005年比 | 1.0 | OECD諸国 もしくは 附属書I国 |
0.5 |
2012年比 | 0.5 | ||||
一人あたり排出量 (非OECD諸国かつ非附属書I国にのみ適用) |
絶対値水準 | それ以外 | 1.0 | ||
2 | GDP比排出量 | 絶対値水準 | 1.0 | 0.5 | |
改善率 (2012年比(or 2010年比(途上国))) |
0.5 | ||||
3 | BAU比削減率 | 1.0 | |||
4 | CO2限界削減費用 (炭素価格) |
1.0 | |||
5 | 2次エネルギー価格 | 電力 | 1.0 | 0.333 | |
ガス | 0.333 | ||||
ガソリン・軽油 (2012 or 2010年実績値で加重平均) |
0.333 | ||||
6 | GDP比削減費用 | 1.0 |