地球温暖化対策技術の分析・評価に関する国際連携事業(R4年度~)(通称:ALPS Ⅳ)
ALPSプロジェクト(ALternative Pathways toward Sustainable development and climate stabilization)
背景と目的
地球温暖化は、地球全体の環境に深刻な影響を及ぼすものであり、その解決が強く求められます。しかし、地球温暖化は、世界のあらゆる国、様々な部門に影響を与え、一方でその影響は均一ではありません。また、各国において取り得る緩和策、緩和費用にも差異が大きいです。そのため、真に有効な対策を実現するためには、総合的なパッケージを作り上げることが重要と考えられます。
2015年末の気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で合意された「パリ協定」が2016年11月に発効しました。2021年11月に英国グラスゴーで開催された第26回締約国会議(COP26)では、パリ協定の詳細ルールの策定の内、先送りされていた協定6条に関する市場メカニズムに関連したルールも合意されました。2023年には第1回グローバルストックテイクが予定され、パリ協定の目標達成に向けた世界全体での実施状況をレビューし、目標達成に向けた進捗の評価がなされてきています。
世界では150以上の国と地域が、21世紀中ごろまでのカーボンニュートラルを表明し、温暖化への対応は、国際的にも成長の機会と捉える時代に突入しています。日本政府は、2019年6月に「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」を策定し、そこでは「21世紀後半のできるだけ早い時期に実質ゼロ排出を目指す」としました。そして、2020年10月には、菅首相が所信表明演説で「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言しました。そして、2020年12月に経済産業省が中心になって、「グリーン成長戦略」を策定しました。2021年4月に、2030年の温室効果ガス排出削減目標を2013年度比26%減から46%減、更に50%減の高みを目指すと深堀を行いました。その他、先進国を中心に2030年目標の深堀が行われました。このように、意欲的な排出削減を目指す動きが国内外で加速してきています。そして、2021年10月には、第6次エネルギー基本計画が閣議決定され、また、地球温暖化対策計画、および、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略についても改定し閣議決定されました。2022年はエネルギー安全保障・安定供給の問題が顕在化しました。ロシア・ウクライナ情勢からの化石燃料価格高騰や、2022年3月の電力需給逼迫等により、改めてエネルギー安全保障・安定供給の課題を再認識し、2023年2月には「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」が閣議決定されました。
ところで再び世界に目を転じてみると、2021年のCOP26では、国連や英国政府等が意図した合意が得られたわけではありませんでしたし、2022年11月にエジプトのシャルム・エル・シェイクで開催されたCOP27までにも、NDCsの排出削減目標の深堀はほとんどなされませんでした。国際社会は、気候変動対策の強化の必要性については概ね認識を一にしているものの、それでも具体的な対応については温度差があります。グローバルでカーボンニュートラルの達成を目指すうえでは、各国の掲げる野心や政策強度の違いによる、競争上の不公平性を是正し、カーボンリーケージを防止したうえで国際的なルール策定を実施していく必要があります。このような中、各国・各地域・各産業の状況を総合的に考慮するとともに、気候変動政策の立案に貢献し得る様々な評価・分析を行う重要性は一層高まってきています。最新の気候変動の科学的な知見の集積として、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は第6次評価報告書を公表しました。これを基にしつつ、複雑な課題に対する科学的な分析等を更に進めていく必要があります。今後、第7次評価報告書作成のプロセスも開始される予定であり、気候変動に関する最新の科学的知見の提供も引き続き求められています。
本事業では、最新の科学的知見や国際交渉の動向も踏まえながら、海外研究機関とも連携・協力しつつ、温暖化対策(緩和策及び適応策等)、ファイナンス、政策の総合的かつ整合的な分析・評価を行い、我が国の気候変動政策の立案や、IPCC、COPといった国際的な議論に貢献することを目的としています。そしてこれらによって、産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につなげる、「経済と環境の好循環」を目指す将来枠組み・我が国の国際戦略立案に資します。