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研究内容(プロジェクト)

「地球再生計画」の実施計画作成に関する調査事業

統合評価モデルDNE21による分析例~大気中CO2濃度550ppmv安定化ケース~

ここでは、大気中CO2濃度を550ppmv以下に安定化する政策下でのコスト効率的な温暖化対策についてのモデル分析結果を見ることができます。
どのレベルに濃度を安定化するのが望ましいのかは、未だよくわかっていませんが、550ppmvは産業革命以前のCO2濃度である約275ppmvの2倍程度にあたります。これ以上厳しい濃度抑制は、対策コストの急上昇をもたらすと見られることなどから、現状ではほぼ妥当な目標であると見られています。

  • ・リファレンスシナリオ
  • ・炭素税シナリオ
  • ・CO2排出抑制シナリオ
  • ・CO2濃度抑制シナリオ

           等

  • ・人口
  • ・基準GDP
  • ・基準最終エネルギー需要

            等

  • ・エネルギー資源量、供給コスト
  • ・エネルギー・CO2輸送コスト
  • ・エネルギー変換効率、設備コスト
  • ・CO2回収効率、設備コスト
  • ・CO2貯留可能容量、貯留コスト

               等

  • ・その他の温室効果ガス排出量

              等

マクロ経済モデル

エネルギーシステムモデル

気候変動モデル

図中のモデル計算結果部分をクリックすると、「リファレンスケース」におけるそれぞれの計算結果の詳細が見られます。なお、実際には多くの計算結果は、世界10地域分割別に得られますが、ここでの一部のデータは世界全体に集計したもののみを示しています。

「CO2濃度抑制シナリオ(大気中CO2濃度を550ppmv以下に安定化)」における分析結果へ

エネルギー、CO2貯留・隔離などの対策技術別のCO2排出削減効果


国内総生産(GDP)推移

「大気中CO2濃度550ppmv安定化ケース」におけるGDPは、「リファレンスケース」に比べて世界全体で最大3%程度の損失が生じる可能性があります。

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世界最終エネルギー消費(燃料種別)

「大気中CO2濃度550ppmv安定化ケース」の2100年時点においては、「リファレンスケース」比で、約24%程度の最終エネルギー需要の抑制がコスト効率的な戦略となっています。

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世界一次エネルギー生産量

「大気中CO2濃度550ppmv安定化ケース」においては、天然ガスの比率を高めることがコスト効率的となります。また、21世紀後半には、太陽光、風力、原子力、バイオマスの利用を高めることがコスト効率的です。なお、2100年時点に石炭の利用が増す結果となっていますが、これは、発電においてCO2の物理回収付きIGCCでの利用が大きくなるためです。

→ 対策技術別のCO2排出削減効果

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エネルギー輸送量(化石エネルギーの正味輸入量)

2020年時点では、石油輸出量の大部分は中東・北アフリカ諸国からが占めますが、2050年時点では、旧ソ連・東欧、ラテンアメリカ諸国の輸出量比率が増大します。また、2050年時点では、その他アジア諸国の輸入量が増大する結果となっています。

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世界地域別の一次エネルギー消費量

「CO2濃度550ppmv安定化ケース」における2030年と2100年のコスト効率的な世界地域別の一次エネルギー消費量は、下図のように計算されます。北米では、2100年にはかなりの量の風力発電の利用がコスト効率的な結果となっています。中国を中心とした計画経済圏アジアは、原子力の比較的大きな利用が見られます。

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石油精製量

「CO2濃度550ppmv安定化ケース」における世界全体の石油精製量およびガソリン精製量は、下図のように計算されます。21世紀半ばに向けて徐々に拡大しますが、21世紀後半には徐々に減少させることがコスト効率的な戦略となっています。

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世界発電電力量

「大気中CO2濃度550ppmv安定化ケース」においては、天然ガスを燃料とした発電の比率を高めることがコスト効率的となります。また、21世紀後半には、CO2の物理回収付きIGCC、太陽光、風力、原子力、バイオマスの利用を高めることがコスト効率的です。

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CO2排出量

「大気中CO2濃度550ppmv安定化ケース」においては、特に21世紀後半には大幅なCO2排出量の削減が必要です。2100年時点では現在よりも少ない5.3GtC/yr程度に排出を抑制する結果となっています。
なお、排出量推移は想定する時間選好割引率に大きく影響します。本計算では5%/yrを利用しています。この割引率の下では、21世紀前半の急激な排出削減はコスト効率的な戦略とはなっていませんが、その間も21世紀後半の大幅な排出削減のための技術開発は行っておく必要があると言えます。

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世界地域別の2100年までの累積CO2貯留・隔離量

「大気中CO2濃度550ppmv安定化ケース」におけるコスト効率的な世界地域別の2100年までの累積CO2貯留・隔離量は下図のように算出されます。日本においては、海洋隔離が多く、また、帯水層へのCO2貯留も見られます。

→ CO2貯留・隔離を含む対策技術別のCO2排出削減効果

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エネルギー価格(限界費用)

一次エネルギー供給価格(CIF価格)

モデル計算によると、「CO2濃度550ppmv安定化ケース」の日本におけるエネルギー輸入価格(CIF価格)は下図のようになっています。2100年には、石油や天然ガス(LNG)は、400US$/toe程度に上昇すると計算されます。「リファレンスケース」に比べて、天然ガスがより利用されるためにより高い価格に、一方、石油の利用は抑制されるために価格はわずかながら低くなっています。
また、石炭の利用は、「リファレンスケース」に比べて大きく抑制されるため、2100年時点の石炭の輸入価格は、「リファレンスケース」よりも40US$/toe程度低い130US$/toe程度と算出されます。

最終需要部門におけるエネルギー価格(電力価格)

モデル計算によると、「CO2濃度550ppmv安定化ケース」の日本、北米、西欧における電力価格は、下図のようになっています。

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CO2シャドープライス(CO2排出削減限界費用)

CO2シャドープライスは、当該時点において更にCO2排出を1単位減少させるときに必要なコスト(CO2排出削減限界費用)です。また、それは、理論的な炭素税率に相当します。すなわち、理論的には、グラフの炭素税率を各時点において課した場合、大気中CO2濃度を550ppmvに安定化可能です。
2010年時点では約5US1990$/tC、2100年時点では約450US1990$/tCと算出されます。

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大気中CO2濃度推移

大気中CO2濃度を550ppmvに安定化できるシナリオです。時間選好割引率は5%/yrを想定した場合の結果です。

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全球平均気温上昇推移

「大気中CO2濃度550ppmv安定化ケース」における2100年時点の全球平均気温上昇は2.3℃(1961-1990年平均比)程度と算出されます。「リファレンスケース」と比べると1.0℃程度の低減が可能です。しかしながら、CO2濃度は安定化しますが、気温はCO2濃度から時間遅れをもって上昇するため、濃度安定化後の2100年以降もしばらくは気温上昇が続くことに注意が必要です。

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海面上昇推移

「大気中CO2濃度550ppmv安定化ケース」における2100年時点の海面上昇は1990年比で40cm程度と算出されます。「リファレンスケース」と比べると10cm程度の低下となります。しかしながら、CO2濃度は安定化しますが、海面上昇は、気温上昇以上に時間遅れをもって上昇するため、濃度安定化後の2100年以降の上昇にも注意を払う必要があります。

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