地球温暖化対策技術の技術評価に関する研究
研究概要
温暖化対策技術の重要度と開発戦略に関する総合評価
ここでは、技術がどの程度利用され得るのかと、その技術をどのように開発すれば良いのかを、同時に考慮し、最適な技術開発戦略を提示可能な新しいモデリング手法の提案と、その試算例を紹介しています。
概要
技術がどの程度利用され得るのかと、その技術をどのように開発すれば良いのかを、同時に考慮し、最適な技術開発戦略を提示可能な、混合整数計画問題として定式化される新しいモデリング手法の開発も行いました。この評価手法は、「技術開発プロセス分析評価システム」同様、GERT(Graphical Evaluation and Review Technique)ロジックを利用して要素技術の技術開発過程をモデル化しており、要素技術の波及効果を含んだコスト効率的な技術開発戦略を提示できる利点も有しています。ここでは石炭ガス化複合発電(IGCC)の技術開発戦略について試算を行いました。しかしながら、解法時間がかかるため、「重要度評価」でカバーしたような温暖化対策技術全般に関する適用のためには、今後のコンピュータ計算能力の進歩も必要となると考えられます。
モデル定式化と評価モデル例
(1)ケーススタディとして評価する温暖化対策技術
ここで示す評価例では、石炭利用発電における代替技術として、次の5種類の技術を考慮しています。なお、ここでは、5種類の技術すべてが、ベースロードで運転されるものと仮定します。
- 1)在来型石炭火力発電(効率:37%(HHV))
- 2)IGCC(効率:43%(HHV))
- 3)IGCC(効率:48%(HHV))
- 4)IGCC(効率:50%(HHV))
- 5)IGCC(効率:55%(HHV))
(2)モデル対象期間
2000~2050年、最適化代表時点:25時点(代表時点間隔:2年間)
(3)石炭利用発電による発電電力量の想定
石炭利用発電による発電電力量については外生的なシナリオとして与えます。ここでは、総合資源エネルギー調査会長期エネルギー需給見通し(2001年)の2010年における基準値である235TWh/yrを参考に、これを全最適化対象期間に適用することとしています。その想定した発電電力量を(1)における5つの技術によって、どのように発電を行えば良いかを最適化計算によって導出します。
(4)評価関数
本モデルにおける評価関数は、石炭利用発電の固定費、燃料費、及び、IGCC技術への追加的な技術開発投資額の和とし、これを最小にする追加的な技術開発投資、設備計画、運用計画を導出します。
詳細な定式化については、こちらをご覧下さい。
詳細な技術開発過程のモデル化については、こちらをご覧下さい。
計算結果例
表1 IGCCの要素技術への最適な追加投資と追加投資効果を含んだ要素技術の開発時間
Additional expenditure(million US$) | Development time(years) | |
---|---|---|
Integration technologies for IGCC-43% | 104.0 | 5.3 |
Integration technologies for IGCC-55% | 92.0 | 8.7 |
Integration technologies for IGCC-48% | 56.0 | 7.4 |
Coal gasification technologies | 20.6 | 3.7 |
Oxide dispersion strengthened supperalloy tech. for gas turbine blade | 16.0 | 5.7 |
Oxide dispersion strengthened supperalloy tech. for gas turbine vane | 7.6 | 6.2 |
Ceramic matrix composite tech. for gas turbine blade | 5.2 | 8.1 |
Dry sulfur-removal technologies | 3.4 | 5.6 |
図1 石炭燃料発電プラントの新設設備容量。
IGCC-43%の発電プラントは2012年から、IGCC-48%は2016年から、IGCC-55%は2018年から運開するのがコスト効率的な結果となっています。
図2 石炭による発電電力量シェアの推移(追加投資の効果;破線は追加投資を行わない場合)。
表1のような追加的な投資配分を行い、IGCC-43%では4~8年程度、IGCC-48%とIGCC-55%では2年程度、前倒しして運用することがコスト効率的であることが示されています。