二酸化炭素地中貯留に関するシステム研究
「地中貯留に関するシステム研究」の概要
社会的受容性
リスク認知研究を基にした社会的受容性評価
CO2地中貯留はまだ馴染みが薄いため、多くの方々に理解していただくよう努力していかなければなりません。そこで、一般の方々はCO2地中貯留をどう認識されるのか、またCO2地中貯留についてどのような情報を必要とされるのかを調査しています。
その検証のため、リスク認知研究の分野で利用される統計解析手法を用いて評価を行っています。
大学生に協力いただき、「CO2地中貯留」と合わせて、他の地球温暖化対策技術など20種のリスク関連項目について、20問の設問に対して回答してもらい、それを基にリスク認知地図、およびリスク-ベネフィット認知地図を作成しました。これにより、「CO2地中貯留」のリスクおよびベネフィットはどのように認知されるのかを、他のリスク関連項目との相対比較で見ることができ、また社会的受容の程度についても把握ができました。
その結果、大学生を対象とした調査での現状においては、「CO2地中貯留」の初期のリスク認知は、『恐ろしさ』については「HLW(高レベル放射性廃棄物地層処分)」、「原子力発電」、「地球温暖化」、「遺伝子組み換え食品」よりも低いものの、『未知性』は比較的高い傾向が、一方、ベネフィットでは「原子力発電」よりも低く認知されることが示されました。
次に、「CO2地中貯留」技術の概要を示した資料(参照:二酸化炭素地中貯留の概要ページ(調査に用いた資料そのものではありませんがおおよそ同じ内容です))を読んでいただいた後、再度、リスク認知およびリスク-ベネフィット認知を把握することによって、提供した情報内容は一般の方々が必要とされている情報として適切であったかどうかを分析しました。その結果、「CO2地中貯留」のリスク認知の低減、およびベネフィット認知、社会的受容の増大が示されました。現時点での情報を適切に伝えることにより、ベネフィットの理解促進および『恐ろしさ』低減が可能であると言えます。しかしながら、リスク認知のうち、特に『恐ろしさ』の低減が顕著に示された一方で、『未知性』の低減は示されませんでした。
『未知性』を表す設問の回答結果から、CO2地中貯留のリスク認知を見てみると、「科学的によくわからない」、「新しいリスク」で、しかも「観察が可能なリスクなのか」かどうかという指標が高く捉えられているということであります。従ってこれらの結果より、『未知性』を示す指標と密接な関係にある研究開発と連携して、『未知性』低減に効果を示す情報を伝えていくことが重要であると考えています。
図1 大学生によるリスク認知地図(円の大きさは社会的受容の大きさを表しています。)
図2 大学生によるリスク-ベネフィット認知地図(円の大きさは社会的受容の大きさを表しています。)
受容向上のためのプロセスに関する調査
また、CO2地中貯留が社会に受容されるプロセスに関する事例調査を行っています。
具体的なプロセスの事例として、パブリック・インボルブメント、ワークショップ、中学教育における問題認識の深化などに関する事例に着目した調査を行いました。その結果、合意形成、住民参加型政策立案、住民発議などのパブリック・インボルブメントの動きが活発化しており、また、参加体験型のグループ学習であるワークショップでは、問題の抽出・分析、意思決定あるいは信頼関係の構築が注目されていることが明らかとなっています。
今後も引き続き、多くの識者への聞き取り調査や事例調査を行い、望ましいプロセスを検討する予定です。