二酸化炭素地中貯留に関するシステム研究
「地中貯留に関するシステム研究」の概要
安全性評価
CO2地中貯留システムの中で、地中へのCO2圧入工程は天然ガス地下貯蔵、石油増進回収事業、地熱開発などの既存事業と類似点を有しており、これらの事業で蓄積された技術や経験を応用することが可能です。また、海外では天然ガスから分離回収したCO2を地中に貯留する事業はすでに行われており、日本でもCO2地中貯留の事業化が検討されています。
CO2地中貯留の事業化にあたっては、長期にわたり安定して地中にCO2を貯留することが可能な地質構造を選定し、適切な安全対策を講じて操業することが安全確保の基本的な考え方です。CO2を貯留する帯水層を覆っているキャップロックと呼ばれている緻密な地層により、CO2は長期にわたり安定して帯水層に貯留できると考えられ、実際に石油や天然ガスは同様のメカニズムにより長期にわたり集積されています。
CO2地中貯留の安全性を評価する上で、CO2を帯水層に圧入するとCO2がどの様に広がり、帯水層にどの様な変化がおこるか予め知っておくことは大切なことの一つです。数値シミュレーションにより、圧入終了時の帯水層の状態を予想した図を示します。背斜構造を持つ帯水層に、20年間にわたり約7,300 万tの二酸化炭素を帯水層に圧入することを想定しました。CO2を圧入するに従い帯水層内でCO2は徐々に広がりますが、圧入が終了した後はCO2の広がりはほとんど変わらないことが予想され、適切なサイトを選定すれば安定して二酸化炭素を貯留できることが分かりました。また、CO2の圧入により帯水層の地層圧は徐々に増加しますが、圧入が終了すると帯水層の地層圧は次第に低下することが予想され、帯水層の地層圧に注意を払いながら圧入することが大切であることがわかりました。
図1 圧入されたCO2の広がりの様子
図2 帯水層の圧力変化の様子
また、CO2が地中に貯留される時間スケールは極めて長いことから、地質環境に変化をもたらす様々な自然現象が、地中に貯留されたCO2に及ぼす影響について安全性の面から評価しておくことも重要なことです。そこで、地質環境の変化が極端と考えられるケースを設定して数値シミュレーションを行い、地中におけるCO2の挙動について評価を行っています。