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基礎的研究 目的 基礎的研究の目的は、室内実験によって、岩野原実証試験での各種検層結果の解釈に必要な岩石物性を取得すること、貯留トラップメカニズムを解明し残留ガス飽和率を取得すること、CO2と岩石の化学反応を明らかにして長期挙動予測に活用することなどです。 砂岩試料を用いた弾性波・比抵抗測定実験 帯水層貯留において一般的に貯留層の対象となっている砂岩試料を用いて、CO2圧入前後における弾性波(P波)の波形変化を計測し、速度低下を確認しました。この測定結果は弾性波トモグラフィーの解析に役立てています。 実験装置の概念図
CO2圧入前後の弾性波の波形 同じ砂岩試料を用い、CO2圧入前と圧入途中における各電極間における比抵抗(単位堆積あたりの電気抵抗)の変化を測定しました。CO2は電気を通さないため、CO2が流入してくると比抵抗が上昇すると期待されます。この実験では、岩石試料の下からCO2を圧入することによって、徐々に比抵抗が大きくなることが観測されました。 比抵抗計測の電極配置
CO2注入による比抵抗の経時変化 これらの弾性波速度や比抵抗の変化をもとに、帯水層に圧入されたCO2をモニタリングできることを明らかにしました。 Gassmann理論による音波検層のCO2飽和度評価 石油・天然ガスの分野で用いられているGassmann理論(多孔質中の空隙が水やガスによって満たされた場合の弾性波速度の変化を説明する理論)を基に、岩野原実証試験における音波検層の結果からCO2飽和度を評価しました。 岩野原実証試験サイトの1,115m、1,116m、1,117mの各深度におけるP波速度とCO2飽和度の関係を調べました。これによると、CO2飽和度が20%以下であれば音波検層結果とGassmann理論からCO2飽和度を推定できることを確認しました。 この結果は別途実施したNMR(核磁気共鳴)検層(地層中の水素原子核に磁気のパルスを与え、その応答を測定することで地層中の水の量や空隙サイズを測定できる手法)と整合が取れており、貯留層に圧入されたCO2飽和度の定量的評価が可能となりました。 P波速度とCO2飽和度の関係
地化学反応による鉱物固定量の評価 岩野原実証試験サイトのコア試料と地層水を用いて反応実験を行い、溶液中のカルシウムの濃度を測定しました。その結果、時間の経過に伴ってコア試料からカルシウムが溶出し、溶液中のカルシウム濃度は増加しました。カルシウムの溶出に伴う水素イオンの減少によって地層水は中和され、CO2が地層水に溶解しやすくなります。また、地層水が中性付近に戻ると炭酸カルシウムが析出するので(方解石など)、最終的にはCO2の安定な貯留形態である鉱物固定に進展する可能性があります。 室内反応実験装置の概念図
カルシウム濃度の変化 位相差電子顕微鏡を用いた灰長石(かいちょうせき、Anorthite)の溶解速度を測定しました。これによって、CO2による鉱物の溶解速度の温度依存性が明らかになりました。このことから、地表付近の温度25℃に対して岩野原サイト地下1,000m付近の温度約50℃では、溶解速度が5倍程度速いことが分かりました。 位相差電子顕微鏡による鉱物表面の溶解の様子
灰長石の溶解速度 また、岩野原サイトにおいて、CO2貯留領域である深度1,118mと比抵抗検層や音波検層で変化が認められなかった深度1,108.6mで地層水サンプリングを行いました。その分析結果から、深度1,118mでは重炭酸イオン(HCO3-)が増加しており、CO2が溶解していることが確認されました。カルシウムや鉄も増加しており、CO2と鉱物の反応が進んでいることが分かりました。このことにより、岩野原では想定よりも早く鉱物固定が進むものと推定されました。 岩野原実証試験サイトにおける地層水組成の変化
成果
今後の課題
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